「人気キャラクター名に改名した男」の自由な人生 彼と婚活で出会い結婚を決断した妻の「視点」

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「美香の両親を介護するためだったのだと気づきました。神の思し召しです」

調子がいいことをさらっと言う俊明さん。さらに、自分は両親が50歳を過ぎてから生まれた息子であり、47歳だった美香さんが「産めない」と思い込んでいることはおかしいと軽く指摘。そして、美香さんとの結婚を真っすぐに望んでくれた。

「そんなことをすぐに言える男性はこの先もいないな、変な人だけど姑息な計算をしたりはしないんだな、と思いました」

美香さんも結婚へと気持ちが傾いた瞬間である。ただし、条件がある。自分は「ラビット」にはなれない。俊明さんが名前を元に戻すこと、だ。

俊明さんは意外にもすんなり再改名を実行。さらに、昼夜逆転の生活で続けていた自営業にも見切りをつけて、IT関連会社で契約社員として働き始めた。

結婚後は2人で不妊治療を続けているが、もし子どもができなくても「美香と一緒に暮らせるなら」問題ないと言い切る。結婚して2年が経過する今でも、美香さんとの家に帰るのが楽しくて仕方ない。理由を聞いても「だって美香がいるんですもん」とだけ答え、筆者の目の前で美香さんの腕や背中を触り始める。1つのことにハマりやすいタイプの人なのだろう。

「俊明で本当にいいの?」

「彼のお父さんに会ったときも、『俊明で本当にいいの?』と真顔で聞かれました(笑)。変わり者過ぎる息子よりも私のことが心配だったみたいです。すごくいいご両親で、私の親のことも気にかけてくれました」

苦笑いしながらも俊明さんとその家族への信頼を明言する美香さん。偶然にも職場の最寄り駅が同じで、通勤する際は会社近くまで俊明さんが荷物を持ってくれる。家事は美香さんが中心となっているが、俊明さんは頼めば何でもすぐにやってくれるという。

「もっと早くに結婚したかったか、ですか? 神様によるタイミングだったのだと今では思っています。若い頃だったら、こんな変わった人は絶対無理だったでしょう(笑)。リビドーのままにとんでもない発言をしますから。私は寡黙な男性に憧れていたのに、彼はベラベラしゃべりますし。でも、本当に裏表がなくて、周囲も気を遣わずに済むので、私が長年通ってきた教会でも彼はホームグラウンドのように過ごしています」

変人ならではの突破力である。慎重派の常識人である美香さんも、年齢を重ねてからは異文化を面白がる余裕を身に付けたのだろう。

「なんだかんだ言って、美香もこの結婚生活を気に入っているんだよね」

「それはあなたが言うセリフじゃない!」

なんだか掛け合い漫才のようになって来た。そろそろ潮時だろう。店先で別れた後、俊明さんが美香さんの肩を抱くようにして帰路につく後ろ姿をしばらく眺めた。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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