(産業天気図・精密機器)デジカメや携帯付きカメラ向けの部品、カラー複合機と成長商材抱え、好調持続へ

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デジタル家電の一つであるデジタルカメラは2003年に大成長を遂げた。2004年は国内市場の伸びが鈍化し、価格競争もより熾烈になると見込まれるが、まだ普及率の低い米国、欧州市場で成長が牽引し、数量拡大が続く。2003年の世界市場実績が4340万台(前年比77%増)に対して、2004年は6000万台(同38%増)と主要メーカーは予測している。なかでも、普及価格帯の製品が揃い出したデジタル一眼レフカメラが本格的な成長期に入るので、一眼レフで強いブランド力を持つカメラメーカーにとってはチャンスだ。またデジタルカメラの他にも、高画素のカメラ付き携帯電話の普及は業界にとっては追い風。高性能機になればなるほど、レンズやシャッタなどで高付加価値品が求められることから、主要部品供給メーカーは当面、繁忙期が続くだろう。
 オフィス用OA機器では、アナログ機に替わってデジタル機、高機能のカラー複合機が伸びており、これらの製品が成長を牽引しそうだ。単なる効率化ではなくネットワーク化、ドキュメントを中心としたソリューション提案へとメーカーの営業スタイルも変化しており、各社ともカラー複合機を主力製品に据えている。プリンタはオフィス用、コンシューマ用とも価格競争が厳しい市場だが、コンシューマ用でも複合機タイプが徐々に比率を上げている。
 2003年度の業績をみると、精密業界では多くの企業が最高益を達成しており、2004年度もその勢いは続きそう。
 キヤノンは、生産革新によるコストダウンに加え、主要部品の内製化によるコストダウン、ヒット製品続出により高収益体質を確立。円高が懸念材料だが、2004年度も増収増益に自信をみせている。リコーも約10年ほど増収増益を続けている優良企業だが、プリンティング事業を主軸と位置付けており、日立のプリンタ事業を買収するなど、積極策がめだつ。HOYAはデジカメ用レンズのほか、PC用ガラスメモリディスク、半導体用フォトマスクなどで主力製品が絶好調で2004年度も最高益更新が続きそう。
 富士写真フイルムは、デジタル関連製品の成長でフイルム事業の落ち込みをカバーする構造が続く。CCD、レンズなど、主要部品をすべて自前でまかなえるのが強み。液晶ディスプレー向けフイルムなど成長商材も多く、事務機器を担う富士ゼロックスのリストラ効果にも期待できる。合併効果が期待されるコニカミノルタは、事務機ではカラープリンタ、中高速機に特化して、経営資源の分散を回避している。これとデジカメ、カメラ付き携帯向けレンズユニットやDVD向けピックアップなど高シェアで強みを発揮できる光学製品を強化しており、カメラ、フイルム事業では成長戦略を取らない方針だ。
 オリンパス、ペンタックスは、好採算の内視鏡事業に加え、デジタルカメラでいかに収益力を高めるかが注目される。ヒット製品が続出したカシオ計算機も、調達コスト削減に本腰を入れ、収益力アップを狙っている。2003年度デジタルカメラで失墜したニコンは、デジタル1眼レフで巻き返しを図るほか、大赤字が続いた半導体製造ステッパーの改善が効き、大幅増収増益となりそう。コンシューマ用プリンタで大手のセイコーエプソンも、携帯向け小型液晶の好調が続きそう。三洋との事業統合で小型特化をより鮮明にしている。
【高橋志津子記者】

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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