紳士服のAOKIで、労組と会長が批判の応酬、深まる溝
「営業時間内でお客様がいる中、『組合の強引な勧誘が何度も行われて困る』と、複数の社員が泣いて直訴してきた」(AOKI首脳)。この指摘に組合側は、「一部ではあったかもしれないが、その都度注意している」(柴山委員長)と、反論している。
こうした事態を受け、会社側も具体的行動に出た。組合によれば、6月に社内で「人事制度勉強会」なる組織を新設、組合を警戒する資料や組合脱退届の書式も配付した。さらに8月24日付で顧問弁護士からとして、「就業時間内の組合活動は違法行為で、違反した場合は懲戒、度重なる場合は解雇の対象となる」旨を、社内報の号外で公示。28日には組合員の1割以上に当たる139人が抜けた。
新社長移行のタイミング
その後は労組のほうも強硬手段が止まらない。申し入れた団体交渉が開かれないことから、9月半ばからUIゼンセン主導の形で、ビラ配りや演説など街宣活動を開始。港区北青山にあるAOKIホールディングス本社のほか、週末や休日などの稼ぎ時も構わず、89カ所の店舗の前で街宣を行った。これには会社側も「街宣にはウチの社員が一人もいない」と憤るばかりだ。
脱退した組合員の復帰を求める組合は、会社が脱退強要したとされる契機を振り返る。「6月初旬に組合からの『要求書』を、HD新社長となる青木彰宏氏(40歳)に出したことに、父の青木拡憲会長(72歳)が驚いたのではないか」(柴山委員長)。同族会社としてスムーズな経営継承をするには、組合が障害となるため、“過剰反応”した、という見立てだ。一方の会社側は、あくまで労組の拡大・増殖志向が原因とする。
創業者であり、強烈なリーダーシップでAOKIを牽引してきた青木会長は、こう断言する。「ケンカしているつもりはない。わが社は民主主義で、主権は社員にある。そのうえで筋を通しているだけだ」。両者の主張は平行線をたどっており、早期解決への糸口は全く見られない。
(鈴木良英 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年11月6日号)
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