マニア心刺激する大人の図鑑 魚の実用本が異例のヒットに

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お堅いビジネス本に交じってノンフィクション部門のベストセラーに長らく鎮座する変わり種の実用本がある。高橋書店の『からだにおいしい魚の便利帳』だ。約98種類に及ぶ魚介類の特徴や産地情報に加え、詳しい調理方法まで写真入りで紹介する図鑑のような作りが特徴。5月の発売以降、約10万部を販売。魚のみならず食材を扱った書籍では異例の売れ行きとなっている。

“前身”は2008年出版の『野菜の便利帳』。女性を中心に野菜への関心が高いのに目をつけ、栄養データなども加えた図鑑を発行したところ、主婦たちが飛びついた。「次は魚を」との声が多かったが、魚類全般への見識が深い著者を見つけるのに一苦労。加えて、魚は生き物だけに無為に写真を並べるとグロテスクになりかねない。そこで色や配置に細心の注意を払い、すしネタにした際の味の特徴を加えるなど工夫を凝らした。結果、より知識欲にアピールした作りになったことで、主婦のみならず、年配男性、釣り好きなど幅広い層から支持を得た。

出版業界は目下、ネットや電子書籍の台頭が著しいが、「紙が生き残るには“モノ”として手元に残したいと思われる必要があるのではないか」と編集を手掛けた書籍第一編集部の小元慎吾氏はみる。マニア心を刺激する図鑑は書籍復権のヒントとなるか。

(倉沢美左 =週刊東洋経済2010年10月30日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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