生き残るのはどこか 『本当に強い大学』2010年版
ほっと胸をなで下ろした大学関係者も多かったに違いない。2010年度の私立大学入試は、志願倍率が前年度の6・83倍から7・05倍に上昇。定員充足率も2・0ポイント改善の108・5%となった。(日本私立学校振興・共済事業団調べ)。
全体的に追い風となったのは、10年3月の高校卒業者数が、前年度比5000人増の107万1000人と、1992年度以降初めて上向いたこと。大学進学率(短期大学を含む)が同0・6ポイント増の56・8%と過去最高に達したことも大きい。
こと私立大については、不況の影響などによって受験生の安全志向、地元志向が強まったため、難関国立大学を避けて地元私立大へ出願する学生が増えたことがプラス要因となった。このことは、規模別、地域別の定員充足率を見れば一目瞭然だ。
規模別では、これまでは学生数800人未満が定員割れ、800人以上が定員充足だった。10年度では「分岐点以下」の大学が善戦。600~799人規模の大学は“脱・定員割れ”となった。地域別についても、大阪府と兵庫県を除く全地域で定員充足率がアップしている。
「役に立つ」大学しか生き残れない時代に
だからといって、厳しい環境が根本的に改善されたわけではない。
減り続けてきた18歳人口は当面、120万人前後で安定的に推移すると予測されている。だが、2020年からは再び下降局面に入る。少子化に伴う“市場規模”の縮小という構造自体は変わらない。
10年度は改善されたとはいえ、それでも約4割の私立大が定員割れ状態になっている。企業で言えば経常利益に相当する「帰属収支差額」で見ても、赤字の割合は大学法人で44・3%、短期大学法人では55・9%にも達する。その割合自体も、ここにきて上昇傾向が続いている。