収益を安定的に増やせば規模は自ずとついてくる--廣瀬博・住友化学社長
あの蚊帳は、素材のポリエチレンに家庭用の防虫剤を練り込み、少しずつ染み出すようにつくっている。しかも5ドル未満で買える。WHO(世界保健機関)の認定を受け普及したが、当社としては、この事業で利益を出そうとは思っていない。売り上げの一部で小学校を建設するなど、当社の中では社会貢献活動の一環と位置づけている。
為替介入は当然だが85円は十分ではない
--日本の製造業にとって悩ましい水準まで円高が進行しています。
日本は“輸入大国”でもあり、悪影響ばかりでもないが、急激な円高は企業としては困る。当社の場合、11年3月期の想定レートは1ドル=90円。1円円高になると、年間約10億円の営業損失要因だ。世界各国が輸出振興による経済成長を狙って自国通貨安を誘導する中で、円は独歩高の展開にある。
ただ、この円高は日本の成長性が評価されたことによるものではない。その証拠に株価は上がっていない。政府当局はこうした状況を是正するべきで、6年半ぶりの為替介入に踏み切ったことは評価できる。しかし、84~85円台では十分とは思えない水準だ。場合によっては、もう一段の措置も必要だろう。
──ほかに政府への注文は。
民主党がすでに出した新成長戦略の一つひとつを早く実行に移し、広く知らしめて国民が将来に明るさを持てるようにしてほしい。そうすれば雇用も確保できるし、消費も喚起される。企業としては法人税や各種規制を国際標準に合わせていく政策を望みたい。諸外国と比べイコールフッティングの状態でなければ、戦えない。日本は株主構成比率で25%が外国人株主となっている。彼らに対して十分な理解が得られるようにしなければならない。
(聞き手:鈴木雅幸・週刊東洋経済編集長、武政秀明 撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2010年10月9日号)
ひろせ・ひろし
1967年神戸大学経営学部卒業、住友化学工業(現住友化学)入社。経理、広報・IR担当業務などを歴任。94年総務部長、01年取締役総務部長。常務執行役員、専務、副社長などを経て09年4月から現職。
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