収益を安定的に増やせば規模は自ずとついてくる--廣瀬博・住友化学社長
--日本の化学メーカーは欧米の企業と比べ規模で劣ります。今後、世界競争激化の中で生き残っていけるのか。住友化学の5年後、10年後の企業像を教えてください。
基本的には高収益型の企業を目指したい。決して規模を狙う会社ではない。ただし、収益を安定的に増大させる過程でおのずと規模はついてくると思う。まず足元を固め、そして20年先ぐらいを見て経営していく。「一企業が20年先を見ても仕方がない」との声もあるが、何と言われようとも見て着手していく。
--長期的に見て成長分野は。
「ICT(情報通信技術)」「環境・エネルギー」「ライフサイエンス」の3分野だ。10年3月期の売上高構成比を見ると、石化と基礎化学が45%程度。これを10年後には3割程度にして、代わりにICT・電池材料などを3割、ライフサイエンスを3割に組み替えていきたい。石化や情報電子の分野は景気変動の要素が大きい。一つの事業に特化せず、利益を確実に生む事業を育ててバランスを取ることで、底抜けしないリスクヘッジ体制を目指していく。
ライフサイエンスの一つである医薬については、連結子会社で糖尿病や中枢神経系に強い大日本住友製薬を通じて、呼吸器系を得意とする米国のセプラコール社を昨年買収した。統合失調症の新薬などに期待している。
今後の食糧問題を踏まえ注力する農薬分野では、豪州の大手ニューファームに20%出資して戦略的な提携関係を構築した。彼らは農薬の分野で世界の7割を占めるジェネリック(後発)薬の分野に明るく、混合剤などへノウハウが生かせる。欧州や南米、アフリカといった住友化学が弱い地域も補完できる。
ICTでは、テレビや照明などに使える高分子有機ELを12年にも実用化する。関連材料の生産を検討している。高分子有機ELは応答速度が速く、3Dテレビに向いている。超薄型でガラス基板を使わないので、形状も自由度が高い。われわれはこの分野で生活空間革命を起こしたい。これら先行投資を刈り取り、次の投資に備えていく。
--住友化学がアフリカで手掛ける蚊帳のオリセットネットは、BOP(ボトム・オブ・ピラミッド)事業の手本とされています。オリセットネット事業の御社の位置づけは。
わたしはBOPという言葉が好きではない。オリセットネットは、BOPという考え方ではなく、アフリカで毎年5歳未満の子供がマラリアで100万人以上も亡くなっている現状に対して、何かできないかという考え方を基にやってきた。