私は、あきおに「お付き合いしていたときに、手を繋いだり、ハグしたりはしなかったの?」と聞くと、あきおはこう答えた。「手は繋いだけれど、それ以上のことはしなかったです」。
プロポーズの夜の話もまた奇妙だった。
あきおは思い出に残るドラマチックな演出をしようと、まずはアミューズメント施設をさとみと一緒に訪れた。そこは、テレビなどでも紹介されるプロポーズのメッカ。そこでプロポーズをし、その後は近くのホテルに移り、初めての夜を2人で過ごすことを計画していた。
親に泊まるって言っていないから「帰るね」
プロポーズは無事、受けてもらえた。そして、ホテルの部屋を取ってあることを告げると、さとみは言った。「今夜泊まるって親に言ってないから、夜は帰るね」。
30歳近い娘が結婚相談所で婚活し、プロポーズをされた。その夜に夫になる男性と外泊するのをとがめる親は、まずいないだろう。
「僕がご両親に許可をもらおうか」とあきおは言ってみたが、「今夜は帰る」と、さとみは譲らなかった。
ホテルの部屋では抱き合ったものの、服を脱がそうと手をかけると、それもかたくなに拒否された。無理やり脱がせることもできず、なんとも肩透かしを食らったような気持ちになった。
それでも結婚話はそのまま進んでいき、両家の顔合わせを終え、2人で住む家も決まり、入籍を済ませて、新婚生活がスタートした。ところが、結婚してからもまったく男女の関係がない。あきおは、夜になると雰囲気作りをしてそれとなく誘ってみるのだが、そのたびに拒否された。
その1カ月後にさとみが実家に帰り、二度とあきおの前に姿を表すことはなかった。義父がすでに元妻のサイン済みの離婚届を持ってきて、そこにあきおがサインし、離婚が成立した。
成婚退会したものの、男女の関係にならずに破綻したカップルは、私の知る限り、あきおだけではない。
元女性会員(41歳)が成婚退会をした後に、相手の男性(48歳)と2泊3日の温泉旅行に出かけた。ところが、夜になると男性は1人で布団に入ってさっさと寝てしまう。1日目は朝も早かったし疲れているのだろうと思っていたが、2日目の夜も何もなかった。
さすがにこれはおかしいだろうと、帰りの車内で彼女が切り出した。「なんでエッチをしなかったの?」。
すると、男性は涼しい顔で言った。「えっ、キミは子どもはいらないって言っていたじゃないか。する必要はないでしょ」。
「それって子どもを作るためだけにするのではなく、夫婦のコミュニケーションでしょう?」
「それだと話は変わってくるな。僕は、キミが子どもはいらないというから、キミとの結婚を選んだんだ」
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