「Netflix婚活番組」に透ける日本人らしさの正体 顔を見ずに相手決める「ラブ・イズ・ブラインド」

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そもそも、この番組はNetflixシリーズ初の恋愛系リアリティーショーとしてアメリカ本国でヒットし、そのアメリカ版のフォーマットをもとに日本版が制作されています。そのため基本的な構成はオリジナルとほぼ同じです。日本版は老舗のテレビ番組制作会社テレビマンユニオンが制作し、アジア人好みに合わせた印象も強いです。

アメリカ版との違いは結婚観の違い?

アメリカ版は当たり前のように性生活の話題も突っ込んでいるのですが、日本を含めアジア圏ではそれはタブー視されがち。アジアで初めて作られた『ラブ・イズ・ブラインド』としてベールに包んだほうが良いと判断されたのかもしれません。

アメリカ版との違いは結婚観の違いとしても表れているように思います。相手の言葉1つひとつに引っ掛かり、細かな条件にこだわる日本人特有の繊細さを『ラブ・イズ・ブラインド JAPAN』から感じ取ることができます。相手の欠点探しをするような息苦しさも多々あり。豪華なセットや華やかな演出が少なくても、激しく熱く突っ走る人間ドラマの力業で魅せるアメリカ版と比べると、やや陰気さが強まります。

お笑い芸人の藤井隆(写真左)と女優の板谷由夏は仲人役の番組ナビゲーターとして参加する(写真:Netflix)

2022年に配信が始まったNetflixオリジナルの恋愛系リアリティーショーには韓国発の『脱出おひとり島』というものがあります。こちらは若者向けの番組ですが、参加者のキャラクター力を頼りに、自己PR力という切り口で戦略的に心理戦を繰り広げる面白さが売りです。韓国オリジナルリアリティーショーとして初のNetflix公式のグローバルトップ10ランキングに食い込み、健闘しました。『ラブ・イズ・ブラインド JAPAN』にもそんな勢いが欲しいものです。

じわりじわりと人気を得ていくものになるのか。2月8日から毎週火曜日、全11話を3回に分けて配信中とあって、最終話のお楽しみはこれからです。Netflixがイチオシするリアリティーショーとしてオリジナルのアメリカ版はバレンタインの時期に合わせて2月11日からシーズン2の配信が始まったところ。カップルが誕生したブラジル版も配信中です。お国柄によって事情が異なる結婚観を見比べるのもオススメです。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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