参院選へすきま風「自公連立」漏れ出す不穏な本音 公明党は“下駄の雪"脱皮を進める可能性も

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これまでの自公連立を振り返れば、今回のように表面化はしなかったものの「自公対立」の火種は絶えなかったのが実態だ。特に、安倍政権が強引な手法で国会での新安保法制成立に突き進んだ際は、「『錨』が『怒』に変わる時に、自公連立が終わる」(自民長老)と、語呂合わせで連立の危機を指摘する声も少なくなかった。

その際、政界関係者の間では「カタカナ読みの英語にすると、『錨はアンカー(anchor)で、怒(り)はアンガー(anger)』。こちらも絶妙な語呂合わせとなるのは、政治的にも偶然とは思えない」と意味ありげに解説する向きもあった。

自公連立自体が「究極の野合」の声も

こうした状況について、野党側からは「そもそも自公連立自体が究極の野合。政党の理念を棚上げにした選挙互助会にすぎない」(立憲民主幹部)との批判が相次ぐ。これに対し、自民党は「立憲民主と共産の選挙共闘こそ野合だ」と言い返す。

そうした中、岸田首相は2月8日昼、山口代表と昼食をともにしながら1時間近く会談した。ただ、主要なテーマはコロナ対策で、会談後、山口氏は記者団に「参院選は重要な選挙なので力を合わせていこうということだ」と説明。相互推薦を話題にしたかは明確にせず、これまでの見送り方針については「変わらない」と語った。

7月10日投開票が確実視される参院選の公示まであと4カ月あまり。国会審議が極めて順調に進む一方、コロナ対策の迷走で岸田政権の高支持率にも陰りが目立つ。その中で、公明が語呂合わせのように「下駄の雪」からの脱皮に挑めば、岸田首相の狙う「黄金の3年」が幻想となる可能性もありそうだ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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