参院選へすきま風「自公連立」漏れ出す不穏な本音 公明党は“下駄の雪"脱皮を進める可能性も

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自公連立の中枢となる山口那津男・公明党代表は、2月6日放送の報道番組で、参院選の自公選挙協力について「相互推薦を(自民党に)お願いしたが、それがない以上、自力で勝てるようにやらざるをえない」と語った。

相互推薦は、自民が改選数3以上の複数の選挙区で公明候補を推薦し、公明は1人区などで自民候補を一律で推薦する仕組み。具体的対象は神奈川、愛知、兵庫など5選挙区だ。

過去2回の参院選では、自公両党が選挙の前年秋までに相互推薦の協定を結んでいた。しかし、3人区・兵庫での維新の攻勢で、自公各1人の候補が相互推薦に踏み切れば、どちらかが落選する可能性が出てきたため、今回は自民が推薦決定を渋ったのが騒動のきっかけだ。

山口代表は6日の番組で、1人区などでの公明による自民候補推薦の可否について、「われわれにいただけないものを、われわれだけが推薦するのはちょっと国民に理解していただけるのか」と現状では対応困難との立場を強調した。

こうした公明党の反発を受け、自民党は選挙の司令塔である茂木敏充幹事長と遠藤利明選対委員長が、公明側との協議で打開策を探っている。しかし、公明は時間切れを理由にすでに党独自の選挙活動を始めており、支持母体の創価学会も選挙での他党候補の支援は「人物本位で党派を問わず見極める」との基本方針を打ち出すなど、「妥協は困難」(公明選対)なのが実情だ。

「下駄の雪」揶揄され続けてきた公明党

自公連立での選挙共闘を最大限活用して長期政権を築いたのは安倍晋三元首相だ。在任中、公明党とは微妙な関係とされた安倍氏だが、自公連立については「まさに風雪に耐えた関係。お互いのよさをいかし補完し合っていく、まさに『ビューティフル・ハーモニー』だ」と繰り返していた。

ただ、両党の連立が20年を超える現在、双方のパイプ役が少なくなったのは事実。過去に「悪代官と越後屋」と呼ばれた、自民・大島理森元幹事長と公明党の漆原良夫元国対委員長(いずれも当時)の緊密な関係は、「その後途絶えたまま、後継の人材が育っていない」(公明幹部)。

長期にわたった安倍政権時代、新安保法制や特定秘密保護法などで、公明は本音では抵抗しつつ、結果的には自民の方針を受け入れてきた。だからこそ、政界では「公明は、『どこまでもついてゆきます下駄の雪』だ」(閣僚経験者)などと揶揄され続けてきた。

これに対し、山口代表は「我々公明党は、連立政権で自民党の暴走を抑える『錨』の役を果たすことで、国民に支持されてきた」と反論。しかし、支持母体・創価学会の中核とされる婦人部などには「平和の党の看板が泣く」との不満が渦巻いていた。

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