【産業天気図・銀行業】貸出金減少で先行きに不安、債券相場もピークアウトで「雨」続く

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 今後は融資先のうち3月期決算の会社について、前期の財務諸表を元に、債務者区分の見直しが行われる。通常ここで引当金の繰入が増えるのだが、09年度後半に輸出企業を中心に業績回復が見られたため、今期の引当金繰入は余り増えない可能性がある。銀行によってはその前の多額の引当金の反動で戻り益が立つかもしれない。

だが、09年の後半以降は、海外の経済環境悪化とそれに伴う円高により、融資先企業の収支が悪化する可能性がある。しかも銀行の収益には時間差で表出するので、来期の業績は要注意である。

また、8月末までは金利が一本調子で低下し、債券価格は上昇し債券バブルの様相を呈した。これにより一時的な売却益を出せば、貸出金や有価証券の金利収入の低下を補うことが出来た。だが、このところの長期金利上昇に見るように、年度後半は金利の低下(債券相場の上昇)はこれ以上見込めないので、こうした利益は期待できない。それどころか、ここから国債の保有を増やすことは含み損の拡大につながるため、集まった預金をどう運用するか、運用難に陥っている状況だ。

10年度後半の収益は急激には悪化しないが、確実に低下する。デフレ脱却が見えない以上、長期的には収益性は低下の方向である。リーマンショック後には、「融資条件(貸出条件)の緩和を行っても、実現可能性の高い経営再建計画があれば貸出条件緩和債権には該当しない」との基準変更が行われたこともあり、与信費用が低く抑えられている面もある。つまり、隠れ不良債権は増えており、公的な補助が切れれば、倒産件数が再び増え、不良債権も増加する可能性がある。ただし、現状で可能性が高いのは、公的支援は解除されるのでなく、長期化し、利ザヤは低位に抑えられたままというシナリオだろう。

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