【産業天気図・銀行業】貸出金減少で先行きに不安、債券相場もピークアウトで「雨」続く
10年10月~11年3月 | 11年4月~9月 |
銀行業界は2011年9月まで1年通して「雨」の厳しい景況感に包まれそうだ。
10年度第1四半期の業績は、概ね利益が上振れ気味に推移している。その主な要因は、金利低下が進み、債券価格が上昇して、債券の売買益を出した銀行が多かったことと、貸倒償却費用、貸倒引当金などの与信費用が非常に少なかったことによる。だがこれは、つかの間の利益とみるべきだろう。
銀行の本業である預貸の状況を見ると、家計のリスク回避の動きから預金が集まる一方で、企業は設備投資を手控えている。貸出金は公的資金の入った銀行や首都圏に近い銀行など一部を除き減少している。実は貸出金の返済が進み、引当金が戻ってくる一方で、新たな貸し出しが伸びていないため、引当金の繰り入れが少なくなっている。差し引きで戻り益が立ってしまっているという銀行も散見される。これは銀行の状況としては、リスクが取れておらず、先行きの収益チャンスが細っているという不健全な状態だ。
与信費用減少には、融資先の債務者区分が改善しているという面もあるが、これもプラスとばかりは受け止められない。債務者区分の悪化を食い止め、倒産件数を抑制している大きな要因が、政府の緊急保証制度であり、公的保証のバラマキによって延命されているとみれる。これは一方で、信用リスクに見合うだけの利ザヤが取れない状況を生んでおり、銀行のトップラインの収益をさらに低下させている。
つまり、預貸の収支は低下している一方、与信費用が下がっているので、最終的な利益が出ているに過ぎない。資金需要が乏しいうえに、公的保証がばら撒かれているので、利ザヤも取れないのだ。