再エネに冷や水浴びせる電力会社の契約中断 太陽光発電の買い取りを止めた九州電力

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今後は再エネの受け入れ可能量を数カ月かけて見極める方針。結果的に受け入れ拒否となる事業者が多数出る可能性がある。FIT法では、電気の円滑な供給確保に支障の生ずるおそれがあれば、受け入れを拒める。事業者の損害を補償する義務もない。

だが問題は電力会社が再エネの受け入れ可能量を増やすための対策だ。要は、昼間に太陽光の発電で需要をオーバーする分を、どこまで調整・転用できるかである。

第一には揚水発電。昼間に太陽光の電気を使って、揚水運転を行い(水を上部のダムにくみ上げ)、夕方や夜間に水を落とし発電する。通常のやり方と昼夜の運転が逆だが、これを行うことで、夜間の火力発電もセーブできる。第二は地域間連系線を使った管外への送電である。現在の連系線の空き容量を活用し、電力会社間の送受電を増やすものだ。ほかにも、太陽光の出力抑制や、蓄電池の活用といった方法が考えられる。

原発再稼働にらみ、再エネを減らす?

そもそも今回の回答保留には疑問点も多い。一つには、接続申請が集中した3月から今回の発表まで、約半年もかかったことだ。電力側は、申し込み内容の詳細確認に時間がかかったというが、もっと早くできなかったのか。

また九電の場合、7月末の再生エネの設備認定容量(政府認可)は1900万キロワットに及ぶが、導入容量(運転開始済み)は400万キロワット弱にすぎない。「この状態で唐突に回答を保留することは、通常のビジネス常識では考えられない」(大林ミカ・自然エネルギー財団事業局長)。

気になるのが原子力発電との関係だ。事業者からも「川内(せんだい)原発が再稼働するから再エネの枠が減ったのでは」との質問が出た。これに対し九電は「再エネのみでは安定供給できない。ベースロード電源としての原発と、調整可能電源としての火力発電も入れた前提で、再エネの接続可能量を見極めたい」と説明。ただ川内原発1、2号機の計178万キロワット、玄海原発3、4号機の計236万キロワットの再稼働を前提にすれば、おのずと再エネの入る枠は狭まる。

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