日経平均が2万5000円に下落しても驚かない理由 米株は今までが出来すぎ、下落後は再び上昇へ

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縮小

こうした投資家心理の悪化は、小型株の不振に表れている。アメリカの中小型株指数である「ラッセル2000」は、昨年11月8日にピークをつけたあと、下落が急速に進んだ。現在はピークから1割強安い水準にある。日本の東証マザーズ指数も直近高値がやはり同16日で、先週末の終値はそこから28%も下だ。

小型株は将来長期間の収益の成長性が期待されるが、一方で業績の振れも大きい。世界の投資家心理が悪化し、リスク回避的な姿勢が強まっているため、収益成長への期待よりもリスクを避けたいという姿勢が上回っているのだろう。

「本番」はこれから、いよいよ「あれもこれもダメ」へ

こうした市場動向に表れた不安の根っこには、やはりアメリカの金融政策の転換が大きく影を落としていると考える。そして、テーパリングも昨年11月に始まったばかりで、その加速も今月からだ。利上げや量的引き締めはすでに想定され懸念されているが、まだ始まってもいない。「本番」はこれからだ。

ただ、そうした金融政策の変化が、アメリカ株を、それが世界株を一段と押し下げていったとしても、別に連銀が悪いわけではない。連銀の使命は、別に株価を切れ目なしに押し上げていくことではなく、雇用を守り、物価を安定させることだ。

つい最近までの量的緩和は、コロナ禍に対応したものであった。雇用を含む景気がコロナ禍を抜け出して正常化に向かっているのだから、金融政策も量的緩和から正常化に向かうのは当然だろう。また、足元のインフレに対する目配せも必要だといえる。

これまでの金余りにおいては、投資家が「あれもこれも」買おうという姿勢にあったため、少し前まで株価は堅調だった。ただ、これは出来すぎであった、そもそも長く続くようなものではなかった、と解釈するのが妥当だろう。

株価は上がるときもあれば下がるときもある、と割り切るべきだ。前回のコラム「今年の日本株は後半大きく巻き返すかもしれない」で述べたように、今年の安値は日経平均が2万5000円、NYダウは3万ドル程度を筆者は予想しており、それは昨年のピークからせいぜい2割弱の下落にすぎず、まあ普通によくある株価調整にすぎない。

今は、金余りの縮小とそれによる市場波乱を投資家が想定して、「あれもこれも」から「あれかこれか」にすでに移行しつつある。つまり、例えば「小型株はもう怖くて買えない、その代わり大型株を買おう」という動き、株式市場内における資金逃避が、前述のように生じているわけだ。

しかし、一段と緩和縮小から引き締めの動きが進んでいけば、「あれかこれか」から、さらに「あれもこれもダメ」といった、リスク資産全体から債券や現金などの安全資産への資金逃避へと、全面的に広がっていきそうだ。

とはいっても、最近までの株価上昇はとくにバブルと呼べるほどのものではなかったと考えており、これからバブル崩壊が来るわけではない。日米の株価指数の予想値を示したように、別にリーマンショックの再来もコロナショックの再来も見込んでいない。世界経済の回復基調が壊れる事態にも至らないだろう。

年前半にさまざまな悪材料が顕在化し、世界の株価が十分に下落すれば、寅年だけに今年後半は株価が上がり「たいがー」、という展開になるだろう。年前半の市況展開は達観し、年央あたりに安値になったら「さてどの株を買おうか」と、今から楽しみに計画していればよいのではないだろうか。

(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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