山形で大逆転狙う「20年売れなかった芸人」の人生 古民家を月100円で借り、畑まで耕す本気ぶり

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つくづくツイてない二人だが、ここからがソラシドというコンビのしぶとさ、だろう。山形県住みます芸人になった後、本坊が趣味の三線を通じて知り合った同県西村山郡西川町の住民から、畑付きの古民家を「月100円」の家賃で借り、くだんの耕運機で「本坊ファーム」を開墾。そこで野菜を栽培、収穫する様子などを、コロナ禍が始まった2020年3月からYouTubeで配信し始めたのだ。

 

西川町は、山形市の中心部から西方約32キロにある、出羽三山の「月山」で知られる町で、冬には大量の雪が積もるという。

「はじめは大家さん、この家、くれるって言ったんです。畑とか全部(笑)。けど、もらったら贈与税とかがかかるっていうんで、『月100円』の家賃で貸してもらうことになって。というのも、ここらへんは冬になったらドカッと雪が降って、毎年、屋根の雪下ろしが大変で、(家を)管理する代わりに畑とか好きに使ってええよって。

畑を見守る本坊(筆者撮影)

これこそ、やりたかったことやと思って。『住みます芸人』になったんやったら、『住みます』の強みというか、地の利というのをドーンと打ち出したろうと思って。

コロナ禍で、東京の芸人も一斉にYouTubeやり始めましたけど、例えば、僕より知名度ある奴より、僕のほうがでっかいとこに住んでて、畑やってて……というほうが面白いやないですか。住みます芸人の地の利を活かした、東京の芸人とは違う、エピソードを作っていきたかったんですよね。

このコロナ禍で、YouTubeで、どこからでも、どんな『番組』でも発信できるようになったという状況は、特に住みます芸人にとってはチャンスやと思うんですよ。ただ(地上波)テレビに取り上げてもらうのを待つんじゃなくて、こっちから発信していくという。そのうちにこの山形で、全国的に注目されるようなコンテンツができたらええなと思っています」(本坊)

作った農作物が「ふるさと納税」の返礼品に

彼らの思惑は当たり、冒頭で記したように、本坊の山形での生活ぶりは、東京のメディアの注目を集めた。が、その後もソラシドは、大根から始めた野菜作りを、にんにくやサニーレタス、カボチャへと拡大。当初、地元のマルシェや道の駅が主だった販路も、専用通販サイトを開設するまでに広がり、にんにくに至っては、山形県ふるさと納税の返礼品にまでなった。

このしたたかな中堅コンビの「住みます芸人」が繰り出す、次なる「山形発全国行き」のコンテンツが楽しみだ。

西岡 研介 ノンフィクションライター

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にしおか けんすけ / Kensuke Nishioka

1967年、大阪市生まれ。1990年に同志社大学法学部を卒業。1991年に神戸新聞社へ入社。社会部記者として、阪神・淡路大震災、神戸連続児童殺傷事件などを取材。 1998年に『噂の眞相』編集部に移籍。則定衛東京高等検察庁検事長のスキャンダル、森喜朗内閣総理大臣(当時)の買春検挙歴報道などをスクープ。2年連続で編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞を受賞した。その後、『週刊文春』『週刊現代』記者を経て現在はフリーランスの取材記者。『週刊現代』時代の連載に加筆した著書『マングローブ――テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実』(講談社)で、2008年、第30回講談社ノンフィクション賞を受賞。ほかの著書に『スキャンダルを追え!――「噂の眞相」トップ屋稼業』(講談社、2001年)、『襲撃――中田カウスの1000日戦争』(朝日新聞出版、2009年)、『ふたつの震災――[1・17]の神戸から[3・11]の東北へ』(松本創との共著、講談社、2012年)、『百田尚樹「殉愛」の真実』(共著、宝島社、2015年)などがある。

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