11日の夜明け直前、北朝鮮最高指導者の金正恩朝鮮労働党総書記は、極超音速ミサイルが「炎の柱」を描いて発射されたもようをモニターで見守っていた。米国のミサイル防衛システムをすり抜けて核攻撃を行う能力を持ち得る新兵器を確保する取り組みだ。
国営朝鮮中央通信(KCNA)によると、ミサイルから分離された極超音速グライダーは240キロメートル「旋回機動」し、海上に設定された1000キロメートル先の標的に命中した。金正恩氏が兵器実験を視察したと公式に伝えられたのは2020年3月以来とされ、同国が「戦争抑止力の強化」につながるとする同ミサイルの重要性を裏付けた。
11日のミサイル試射は今年に入って2回目だった。
金正恩氏が極超音速ミサイル試射を視察-「大成功」と国営メディア
北朝鮮の主張が事実かどうかは現時点で確認されていないが、同国の兵器開発プログラムの転換を象徴する出来事ではある。金総書記はこの2年余り、米国とその同盟国の迎撃システムを回避できるミサイル開発に注力してきた。米国主導の先制攻撃は、検討するには代償が大き過ぎると相手に認識させる狙いがある。
こうした取り組みは、北朝鮮が2017年に見られたような米国との対峙(たいじ)を回避するのに役立つ可能性がある。当時のトランプ米大統領は、米国を脅し続けるなら北朝鮮は「炎と怒り」に遭うだろうと警告。北朝鮮を標的とする「ブラッディ・ノーズ(鼻血)作戦」に米政権当局者が言及したとも報じられていた。
一連のミサイル試射は、18年のトランプ氏との歴史的な米朝首脳会談後も、金総書記が将来攻撃を受ける可能性を回避するための計画を推し進めたことを示している。