「週休3日制」で損をする企業・得をする企業の差 急いで導入すれば生産性が落ちる可能性も

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まずここから言えることは、生産性を上げない限り週休3日制の導入なんて、夢のまた夢ということだ。そのためのデジタルシフトが相当遅れているのだから、優先順位が間違っている。

それどころか、いまだデジタルシフトを妨げる要因もある。それが長時間労働である。働き方改革関連法が施行され、2019年から時間外労働の上限規制ルールが適用された(中小企業は2020年から)。

長時間労働があたりまえの組織が、デジタルシフトなどできるはずがない。ところが政府肝いりの取り組みも、なかなか認知度が高まらない。いまだに「月45時間、年360時間を超えてはならない(原則)」というルールを知らない人もいる。

私がコンサルタントとして支援する企業でも、「上限規制ルールは聞いているが、具体的な内容までは知らない」と呑気なことを言う経営者も少なくない。いったい、なぜか? 2020年初頭からコロナ時代に突入し、それどころではなくなったからだ。

日本企業が直面する課題とは

組織文化も、なかなか変わらない。多様な働き方の象徴的な存在として「テレワーク」があった。しかしテレワークも、なかなか普及しない。コロナ禍になって、慌ててテレワーク環境を整備した企業も多かった。が、緊急事態宣言が解除されると、「出社するのが基本」と手のひらを返した企業も多い。

多様な働き方を推進させていかなければならない時代だ。それなのに、これでは若い社員の心が離れていくのは当然。従業員エンゲージメントが落ちれば、生産性がアップするはずがない。

さらに昨今は好業績でもリストラするという「新種リストラ」も、大企業を中心に広がる。昨年は「45歳定年制」というキーワードがTwitterでトレンド入りするなど、中高年をターゲットにしたリストラは、さらに増える見込みだ。

ここで、日本企業が直面している課題をざっくりとまとめよう。

①超少子化による人材不足→労働人口の減少
②産業構造の変化による新種リストラ→労働人口の減少
③働き方改革による長時間労働の是正→労働時間の減少

日本企業は「一企業当たりの総労働時間」を激減させている状況がある。そんな中、「週休3日制」を導入すれば、労働日数まで減ることになる。労働時間が売り上げや利益に直結するサービス業、製造業にとっては死活問題だ。

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