日欧がしのぎ削った高速鉄道開発の「取材秘話」 ドイツICEの試作車に同乗、技術者との交流も

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TGV-PSEは南東線開業前、1981年2月26日の試運転で当時の世界最高速度記録である時速380kmを達成している。筆者は南東線開業の数カ月前から試運転列車を取材していたが、試験列車は当時確認できなかった。

試運転中のTGVを取材中の筆者=1979年(撮影:南正時)

その後TGVは大西洋線、北ヨーロッパ線などと路線網を拡大したが、スピードの世界記録も次々と更新していった。日本の新幹線と異なるのは、試験車でなく営業用の車両によって速度記録を達成していることだ。1990年5月18日には開業を控えた大西洋線で時速515.3km、さらに2007年にはやはり開業直前の東ヨーロッパ線で時速574.8kmという、鉄車輪式の鉄道では世界最高速度となる記録を樹立している。

ただ、この速度記録を達成した車両は営業用の量産車で試験後は通常運転に就いているものの、試験の際は特別に仕様変更してハイパワー化しており、世界中にTGVの売り込みを図るデモンストレーションともいうべき記録達成だった。日本の新幹線を大いに意識したであろう速度記録に刺激されたか、スペイン(AVE)や韓国(KTX)はTGVベースの車両を導入した。

成功しなかった高速列車も…

各国が高速鉄道技術の開発を競う中で、失敗に終わった例もある。鉄道発祥の国イギリスが1970年代から開発を始めたAPT(Advanced Passenger Train)だ。まず1972年に独特な外観のガスタービン式車両「APT-E」を試作して各種試験を行った後、第2弾として電車方式の「APT-P」370形が登場した。

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