プレゼンが全然響かない人に通じる残念な共通点 つかみで滑り、具体性に乏しい話で心は動かない

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「広く浅く」ではなく、「狭く深く」語っていくのが有効なのは、ビジネスのプレゼンでもいえることです。もちろん、全体像や定量的なデータを示すことが基本的に大切であることは言うまでもありません。そうした客観的な情報が聞き手の論理的な部分に訴えるものだとすると、狭く深く具体的に語っていくのは、聞き手の感情の部分にふれるやり方です。ビジネスでは特に、この2つの方法をうまく使いこなす必要があります。

感情を動かすカギ=エピソードの語り方

たとえば、社内での新商品の提案。街角でお客さまにアンケートを行った結果をプレゼンするとしましょう。よくあるプレゼンはこんな形ではないでしょうか。

「駅前のスーパーでアンケートを行いました。こちらの円グラフをご覧ください。答えてくれたのは20代から40代の主婦50人。実に67%の方がパッケージをほめてくれました」

客観的データとして理解できますね。そこにこんなエピソードを入れたらどうでしょう。

「私、スーパーのレジ横で商品を持ってたんです。そうしたら赤ちゃんを抱っこした20代くらいのお母さんが来たんです。その方、私の持っていたパッケージを見て、『これいいわね。これだったら赤ちゃんが間違って飲み込まないから』って言って、すっとひと箱買ってくれたんです。ほかにも『手が汚れなくて使いやすいそうね』とか『買い置きしておいてもデザインがかわいいから邪魔にならないかもね』と話す人もいたんです。パッケージを手にとってほめてくれる人が2時間で17人もいたんですよ!」

頭の中に情景がありありと浮かんできませんか。これができると数値では出せない説得力が生まれます。エピソードを語るときのコツは、次の3つ。

①自分のいた場所やそこで何をしていたかなど状況説明する

②その場に出てくる人の様子、動きなどを実況描写する

③実際に行われた会話を再現する
『元NHKアナウンサーが教える 話し方は3割』(中央経済社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

この要素と順番を意識してエピソードを語るようにすると、聞き手の頭の中にイメージがわきやすくなります。昔話の話の始まりも①から始まりますよね。そして話が展開するにつれ、②と③が入ってくる。これがストーリーに没入させる最もシンプルな形なのです。

心を動かすプレゼンやスピーチをするには、とにかく聞き手の気持ちになること。聞き手の脳内に「具体的なイメージを見せる」こと。これが大切なのです。

前回:「プレゼンのヘタな人が知らない『話し方』3大要素」(2021年12月22日配信)

松本 和也 プレゼン・スピーチコンサルタント、元NHKアナウンサー

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まつもと かずや / Kazuya Matsumoto

兵庫県神戸市生まれ。私立灘高校、京都大学経済学部を卒業後、1991年、NHKにアナウンサーとして入局。奈良・福井の各放送局を経て、1999年、東京アナウンス室に。2016年6月退職。同年7月から「株式会社マツモトメソッド」代表取締役。ビジネスで必要な「理解しやすく」「説得力のある」伝え方を徹底的に磨く指導が特徴。話し方はもちろん、原稿・スライドの構成までトータルでサポート。テレビ司会の豊富な経験から得た、画面越しに伝える実践的なノウハウが好評を博している。著書に『心に届く話し方65のルール』(ダイヤモンド社 2017年)。

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