東海道新幹線、「50周年」が意味する未来 日本の絶対安全な超特急は海外へ(動画あり)

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50年前の1号車の様子 (協力)毎日映画社

 

一方、新幹線ネットワークも拡大してきた。1975年までに山陽新幹線が博多まで全線開通し、82年には東北・上越新幹線が開業した。平成に入っても、97年に長野新幹線(高崎―長野間)、2004年に九州新幹線(新八代―鹿児島中央間。博多―新八代間は11年に開通)、東北新幹線も02年に八戸、 10年に新青森まで延伸を果たしている。完成した新幹線の総延長は、フル規格のものだけで2300キロメートルを超える。15年春には北陸新幹線(長野―金沢間)が開業、さらに16年春には北海道新幹線(新青森―新函館北斗間)が開業する。

新幹線を通すための工夫も生まれた。フル規格ではコスト増になるため、在来線の線路を改軌して、レール幅を新幹線に合わせ走行させる、「ミニ新幹線」も登場。92年に山形新幹線、97年に秋田新幹線として登場した。時速200キロメートルも出すことはできないが、東京まで乗り換えなしで直通できるという効果をもたらした。

また最近では、車両が在来線の幅に可変できる、フリーゲージ・トレインが実用化に向けて実験が重ねられており、九州新幹線の西ルート(=長崎新幹線、武雄温泉―長崎間)での投入を計画している。費用面、採算性等を考慮し、フル規格でなくても新幹線の機能を損ねず、高速走行できる車両の完成を目指し ている。こうした問題解決のため、最新鋭の技術が集結するのも、新幹線ならではのことだ。

 インドやベトナム、米国への輸出も目指す

ただその反面、新幹線が政治の表舞台に引きずり出されることも多い。”我田引鉄”という言葉があるように、有力政治家の地元に新幹線をいち早く通そうとする動きもある。目下、北海道新幹線や北陸新幹線(金沢―敦賀間)、長崎新幹線の早期開業を目指し、与党(自民・公明)が政府にその実現を求めて申し入れを行い、議論・検討が進められている。

長期的には人口減で国内市場が縮小する中、新幹線の海外展開も進んでいる。2007年に開業した台湾新幹線は、JR東海とJR西日本が共同開発した700系をベースに車両が作られているものだ。また中国にも、JR東日本のE2系車両が輸出されている。

新幹線の最大の特徴として、平面交差のない専用軌道と、衝突を防ぐATCシステムが挙げられる。その二つの要因で「クラッシュ・アボイダンス(衝突回避)」の原則が保たれるとしているが、この原則による高速鉄道システムを海外でのデファクト・スタンダードにするため、JR4社(東海、東日本、西日本、九州)を中心に、今年4月、IHRA(国際高速鉄道協会)が創設された。この10月22日には、海外の鉄道関係者を招き、大規模なフォーラムを開催する。こうした取り組みで、新幹線のメリットを最大限アピールする。

最近では、インドやベトナム、米国等へ、新幹線輸出を目指す動きが始まっている。次の50年先、新幹線が国内だけでなく、海外でも当たり前のように走る世界になるか。鉄道関係者の努力と挑戦は続く。

(撮影:尾形文繁)

宇都宮 徹 東洋経済 記者

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うつのみや とおる / Toru Utsunomiya

週刊東洋経済編集長補佐。1974年生まれ。1996年専修大学経済学部卒業。『会社四季報未上場版』編集部、決算短信の担当を経て『週刊東洋経済』編集部に。連載の編集担当から大学、マクロ経済、年末年始合併号(大予測号)などの特集を担当。記者としても農薬・肥料、鉄道、工作機械、人材業界などを担当する。会社四季報プロ500副編集長、就職四季報プラスワン編集長、週刊東洋経済副編集長などを経て、2023年4月から現職。

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