仕事と家庭、「両立」しなきゃダメですか? 私たち、こうして会社を辞めました

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パートナーや子どもと離れて単身赴任したり、残業できないことに罪悪感を覚えるような「両立」より、家族の穏やかな暮らしのために、ある時期仕事を辞めたっていい。一度リタイアしても、やりがいと適切な報酬を得られる仕事に戻れる社会を目指すほうがいいのでは──。

イライラが伝染する

育休から復帰したばかりの女性(35)はこのブログに「救われた思いがした」という。

深夜労働が当たり前の広告業界に時短で復帰した。上司からは「時短だからつまらない仕事を与えるなんて不平等だろう?君は優秀だったんだから、期待レベルは下げないよ」と告げられた。自分で手を動かすのが好きだったが、限られた時間で最大の成果を出すためにマネジメントに徹した。必死に頑張ること3カ月。朝、目覚めると、天井がグルグル回って立てない。前日、大阪に日帰り出張した疲れだろうと思ったが、1カ月以上たったいまも不調が続いている。

夫は協力的で「完璧を目指さなくていいよ」と言うが、急いで作った夕食を子どもが食べなかったりするとイライラが爆発。夫自身も精いっぱいなだけに、互いのイライラが伝染する。2人ともこんなに頑張ってるのに、なぜ?

コンサルティング会社ワーク・ライフバランスの大塚万紀子さんが指摘した「原因」は、日本企業の、1年のトータルでどれだけ高い山が積めたかという「期間あたり生産性」に基づく評価だ。これでは、実際は生産性の低い社員が評価される一方、時間に制約がある社員は圧倒的に不利。いまは子育て中の社員ばかり目立つが、今後は親の介護で制約を抱える社員が増える。このことを前提に、「社会全体の仕組みを変えていくべきだ」と大塚さんは言う。

昨今は多くの会社がダイバーシティー推進を掲げるが、制度があっても運用する側の意識は旧態依然というケースも多い。

外資系企業で10年以上マーケティングの仕事をしてきた女性(36)は、第1子が保育園に入れず、育休の延長を申請した。すぐに上司から連絡があった。

「延長するとあなたのポジションはないかもしれない」

仕事を手放したくない一心で、月額の保育料15万円というプレスクールに子どもを預けフルタイムで復帰したが、今夏、第2子の出産を目前に退職した。

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