運賃上昇の甘美な味わい。再増額期待が高まる海運大手3社
日本郵船、商船三井、川崎汽船の海運大手3社は7月29日にそろって通期営業利益見通しを上方修正した。しかしその後にバラ積み船の運賃市況が想定以上に上昇。コンテナ船の運賃見通しにも一部慎重すぎる面があったために、大手3社とも再増額の可能性が高まっている。
まずはバラ積み船。4~6月期業績を発表した7月29日の運賃市況は大型船のケープサイズが1万4443ドル、中型船のパナマックスが2万0752ドルと低迷していたが、8月に入ってから上昇が鮮明化。8月20日にはケープサイズが3万4913ドルまで回復、パナマックスも2万4830ドルをつけた。
4月1日からの平均はケープサイズが3万1175ドル、パナマックスが2万6584ドル、7月1日からの平均は1万9786ドルだ。7~9月期はケープで3484ドル~5484ドル上ブレ。パナマックスで1786ドル~4786ドル上ぶれている。通期ではケープサイズが175ドル~2575ドル上ブレ、パナマックスで4284ドル~5084ドル上ぶれている。各社聞き取りベースの感応度をもとに計算すると、日本郵船と商船三井で50億円、川崎汽船で10億円程度の利益上振れ余地になると「東洋経済オンライン」では見ている。
不定期船の部門利益の各社想定:
1Q 2Q 上期 下期 通期
日本郵船 224億円 126億円 350億円 250億円 600億円
商船三井 280億円 180億円 420億円 360億円 820億円
川崎汽船 117億円 53億円 170億円 105億円 275億円
各社想定と7~9月期の8月20日までの実績平均との乖離
ケープサイズ:4月1日からの平均3万1175ドル、7月1日からの平均1万9484ドル
各社想定 7~9月期 下期 通期
日本郵船 1.6万ドル 3万ドル 2.86万ドル
(+3484ドル)(+1175ドル)(+2575ドル)
商船三井 1.6万ドル 3万ドル 2.86万ドル
(+3484ドル)(+1175ドル)(+2575ドル)
川崎汽船 1.4万ドル 3.5万ドル 3.10万ドル
(+5484ドル)(▲3815ドル) (+175ドル)
(注)いずれも4航路平均。川崎汽船の下期想定は期初想定のまま。カッコ内は各社想定と実際値との差。プラスは想定よりも実際が上ぶれていることを示す
パナマックス:4月1日からの平均2万6584ドル、7月1日からの平均1万9786ドル
各社想定 7~9月期 下期 通期
日本郵船 1.5万ドル 2.2万ドル 2.19万ドル
(+4786ドル)(+4584ドル)(+4684ドル)
商船三井 1.8万ドル 2.0万ドル 2.23万ドル
(+1786ドル)(+6584ドル)(+4284ドル)
川崎汽船 1.7万ドル 2.0万ドル 2.15万ドル
(+2786ドル)(+6584ドル)(+5084ドル)
(注)日本郵船は太平洋ラウンド、商船三井や川崎汽船は4航路平均。4航路平均のほうが太平洋ラウンドよりも平均して高い。カッコ内は各社想定と実際値との差。プラスは想定よりも実際が上ぶれていることを示す
コンテナ船(定期船)については、日本郵船の想定が実態を正確に反映している一方、商船三井は7~9月期にピークシーズンサーチャージ(繁忙期の上乗せ運賃)を加味していないほか下期の運賃想定が慎重すぎる。このために80億円程度の上振れ余地があると東経オンラインでは見ている。川崎汽船に至っては下期想定を期初想定のままで据え置いているために急減益となるように見えるが、川崎汽船のみ急悪化する理由は見当たらない。川崎汽船はコンテナ船部門で100億円程度の上ブレ余地がある。
コンテナ船(定期船)の部門利益の各社想定:
1Q 2Q 上期 下期 通期
日本郵船 103億円 122億円 225億円 105億円 330億円
商船三井 85億円 85億円 170億円 80億円 250億円
川崎汽船 89億円 111億円 200億円 10億円 210億円
以上を総合すると以下のようになる。期初では日本郵船の上振れ余地が最も大きく実際そのとおりになったが、7月29日の上方修正では商船三井が最も上振れ余地が大きく川崎汽船がこれに次ぐ格好だ。
上振れ余地 バラ積み船 コンテナ船 合計
日本郵船 +50億円 0億円 +50億円
商船三井 +50億円 +80億円 +130億円
川崎汽船 +10億円 +100億円 +110億円
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