産業リサーチ(ホテル) 部屋数増加続く中、外資系進出でますます競争激化。M&Aも活発へ

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全産業的に需給ギャップの解消が課題となっている今、供給が増え続ける希有な産業がホテルだ。1995年からの5年間でも936軒・8万8438室が純増している。
 土地代・賃貸料の下落による採算ラインの低下、ホテル併設による再開発での容積率緩和など理由はいろいろだ。確かに日本は、米国と並んで国民の自国ホテル利用が盛んだが、限度というものがある。たとえば大阪のホテル群はUSJ効果で一時潤ったが、それがはげてからは過当競争に悲鳴を上げている。程度の差こそあれ、全国的にも状況は変わらない。有名ホテルでも赤字だったりするのだ。
 それでも、首都・東京ではホテル建設ラッシュが止まらない。日本橋、丸の内、汐留、品川と都心での再開発案件が目白押しだからだ。4月には六本木ヒルズでグランドハイアット(森ビル、ハイアットが運営受託)、5月には品川でストリングスホテル(全日空ホテルズ)、7月には汐留でロイヤルパークホテル(三菱地所)が開業。
 こうした国内勢に今後は外資が加わる。これまで外資は、日本の地価の高さから直接の進出を見送ってきた。外資系と見られているホテル群も実はほとんどが、経営主体は日本資本で運営を外資ホテルチェーンが受託する形だ。ところが地価下落で土地までは手当てできないものの賃借はできる水準になった。
 セントレジス東京(汐留、2005年1月開業)、マンダリンオリエンタル東京(日本橋、2005年末開業)、ペニンシュラホテル丸の内(有楽町、2007年開業)のいずれも超高級ホテルは、賃貸物件の内装を自前で行う予定だ(推定で投資額は各100億円内外)。対象は海外からの出張者プラス国内個人の上積み。パークハイアット東京、ウェスティンホテル東京、フォーシーズンズホテル椿山荘の新御三家、さらには帝国ホテル、ホテルニューオータニ、ホテルオークラの御三家などとの上顧客の奪い合いが激化しそうだ。
 再編という点でも、焦点は外資。ホテルは人件費のかかる宴会部門を縮小し、修繕費をケチればなかなか潰れないが、そうした苦しい経営のホテルは相当数に上る。外資はこうしたホテルの中で、経営が変われば再生可能な案件を物色中。外資のメガホテルチェーンはあらゆるランクのブランドを持っているので、かなりのホテルがターゲットになりうる。大手だからその対象にならないとは限らない。

(株)東洋経済新報社 電子メディア編集部

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