吉本興業が「アートと地方創生」で打ち出す新機軸 沖縄「やんばるアートフェスティバル」の本気度

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人気芸人をバラエティや情報番組、お笑いコンテストなどに数多く送り出し、2022年に110周年を迎える“お笑い”の吉本興業だが、そもそも以前からアートにも力を入れていた。

大﨑会長はジミー大西をはじめ、野生爆弾のくっきー!など個々の芸人が表現活動のひとつとして積極的にアートに取り組んできていることを挙げる。

確かに吉本興業の所属芸人に限らず、北野武や片岡鶴太郎、木梨憲武などベテラン勢でも昔からアートを表現のひとつとして取り入れる芸人たちは見られる。一見、畑違いにも思えるそれぞれの創作活動だが、エンタテインメントもアートも決まった形はなく、表現という枠で広く捉えれば親和性の高さにも納得がいく。

「たまたま110年ほどお笑いをやってきました。でも、その道のりのなかでは、創作活動をして作品を発表したり、目の不自由な人に絵画を教えるといった活動をしている芸人もいます。会社として本格的に旗を立てたのは最近かもしれませんが、ずっと前から芸人が個々にやっていたことです。それを映画祭やアートイベントとして中心に据えるものもできるのではということで、『京都国際映画祭』を皮切りに、『やんばるアートフェスティバル』など、大々的にアートを打ち出しています」(大﨑会長)

お笑いを本業としながらアートも芸のひとつとして個々に活動していた芸人たちが、それを前面に押し出せる時代に変わった。

吉本興業の周囲からの視線にも変化が現れている。大﨑会長は「ありがたいことに、純粋なアートでも現代アートでも吉本興業と一緒にやりたいという芸術家や関係者の方が増えてきています。最近では映画祭でもアートのほうが盛り上がったりしている。だったらそちらのほうをもっと連携し、広げていこうという意識があります」と、確かな感触をつかんでいる。

地方創生の実績が武器

東京ビエンナーレや瀬戸内国際芸術祭、越後妻有アートトリエンナーレなど全国各地で地域に根づいた芸術祭が数多く開催されている。そこへ「異業種参入」という見方をする人もいるだろう。しかし、地方創生をキーワードにした同社の強みを武器にアートの世界での存在感を出そうとしている。

「地元それぞれの伝統文化や暮らしぶりのようなところで、吉本興業とジョイントさせていただける地域や機会があれば、がんばってやりたい。ただ、こちらから土足でドタドタ上がり込むみたいなことは決してやってはいけない。お声がけいただいて、認めていただくことが大前提。慎重に広げていきたいと考えています」(大﨑会長)

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