日本人が「次のGAFA候補を知らない」悲しい理由 投資家が教える「日本は後回し」の破壊的企業

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海外マーケットで頑張る日本企業としては、次世代型電動車椅子のウィルが挙げられます。

ただの車椅子と思いがちですが、例えば、メガネは「目が悪い人がかける」というものから、今は「かけてカッコよくなる、頭が良さそうに見せる」というイメージに変化しましたよね。この発想を狙ったものなのです。

日本よりも海外のほうが売り上げが大きいと推測されるため、時価総額ランキングなどのメディアにはあまり出てきませんが、まだまだ骨があると思います。あまり余計なマーケティングはせずに、プロダクトで勝負しており、彼らの車椅子は、アップルの発表会などにシレッと登場します。

本書にも、プロダクトがしっかりしていればマーケティングはいらないと書かれていますが、その路線です。

実は、それを一番やっているのは、テスラです。彼らは、広告費ゼロ。テスラ車が街を走っていることそのものが広告であり、販売代理店を外して、直営で販売する。ビジネスモデルとしては、いわゆるD2C(ダイレクトトゥーコンシューマー)というもので、利益率が増加します。

ほかに、海外で頑張っている日本企業と言えば、スマートニュースです。海外では今のところ、積極的に攻めている日本企業の1つです。

他社にタダ乗りして、いろんな情報を吸い取るサービスはたくさんありますが、スマートニュースは、スローニュースという別のサービスも通じて本当に中立な情報や必要なもの、ジャーナリズムとは何かをきちんと考えています。いわゆる、パーパス経営をしているわけです。自分たちは何者であるのかを考えながらサービスを提供しているところに、まだまだこれからも伸びしろがあると感じます。

今後の世界を考えるための一冊

日本企業にいると、どうしても変化や危機に気づかなくなってしまいます。本書は、今の資本主義、現行制度について考え直したり、「こんなことがあった」と復習し、今後の社会の反応を考えるきっかけにするにはいい本だと思います。

ただ、ギャロウェイさんは投資家ではないので、本書を見てそのとおりに株を取引したら、大やけどを負うでしょう。

たとえば本書ではテスラについて非常に厳しい見方をしていますが、原著刊行後の2021年11月までに急激に株価が伸びました。もしも原著を信じて株をショート(売り持ち)していたら、大変なことになっていたはずです(笑)。技術の解説もあまり触れられないので、あくまで技術や投資ではなくマーケティングの人として言葉を聞かなければなりません。

この世代や、非技術畑の人はそう思い込みやすい、そういったストーリーが耳に心地よさそうなのだなという参考になります。その点には注意して読むことをおすすめします。

(構成:泉美木蘭)

山本 康正 ベンチャー投資家、京都大学経営管理大学院客員教授

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やまもと やすまさ / Yasumasa Yamamoto

東京大学で修士号取得後、NYの金融機関に就職。ハーバード大学大学院で理学修士号を取得し、グーグルに入社。フィンテックやAI(人工知能)などで日本企業のデジタル活用を推進し、テクノロジーの知見を身につける。日米のリーダー間にネットワークを構築するプログラム「US-Japan Leadership Program」諮問機関委員。京都大学経営管理大学院客員教授。日本経済新聞電子版でコラムを連載。著書に、『シリコンバレーのVCは何を見ているのか』(東洋経済新報社)、『世界最高峰の研究者たちが予測する未来』(SBクリエイティブ)、『アフターChatGPT』(PHP研究所)、『テックジャイアントと地政学』(日本経済新聞出版)など。

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