UUUM、専属YouTuber「半減」に踏み込む事情 動画広告の成長に見えた「限界」をどう超える?

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既存の枠組みだけでもう一段の成長が難しくなってきた広告関連では、周辺領域の開拓を進めている。

UUUMのようなユーチューバー事務所への企業からの依頼は従来、企業とユーチューバーがコラボするタイアップ動画の作成・投稿が主だった。だが今後は、「芸能人のキャスティングや広告運用、イベント展開など、(インフルエンサーを起点にした)広告代理店のような提案も行っていく」(渡辺CFO)。周辺領域も一括で受注することで、単価向上につなげる狙いもあるようだ。

また、社外クリエーターとの取り組みの拡大も目指す。すでにUUUM所属ではないインスタグラマーと協業したブランド立ち上げなども行っており、累計販売金額は3000万円を突破している。渡辺CFOは「今までは社内のことで手一杯だった。(人員配置など)組織を変え、今後は社内外問わずクリエーターとビジネスをしていく」と意気込む。

組織体制も「アドセンス中心」から脱却

300人という従来の専属クリエーター数では薄く広く、トップ層以外にもリソースを割く必要があった。今回、専属クリエーター数を半減させることで、より影響力の大きい、かつ、動画以外の領域へ活動の幅を広げたいユーチューバーに社内リソースを集中できるようになる。

これまで専属ユーチューバーのマネージャー業務をしていた人員は、グッズ販売などのビジネス部門への配置換えを行う。クリエーター・社員ともにアドセンス中心から脱却を図るための組織体系へ転換する。

2021年8月に行われた株主総会で鎌田和樹社長は「従来は動画配信による収益を得ることがゴールだったが、今ではそこから次のビジネスとしてグッズ製作やイベントを行っていく時代だ」と語っている。

HIKAKIN、はじめしゃちょーなどUUUM専属の筆頭格といえるユーチューバーは、今や有名企業や公共機関のテレビCM、バラエティ番組などに引っ張りだこだ。ユーチューバーの社会的地位を高め、時代を切り開いてきたUUUM。次なるクリエーター経済圏を生み出すことができるのか、真価が問われるのはこれからだ。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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