過去最多「不登校19万人超」で今議論すべきこと 「不登校新聞」編集長が提言

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もう1つの背景が「生きづらさの低年齢化」です。不登校のなかでも「小学生の不登校」は年々増えており、直近5年間では倍増するなど、増加のペースも早くなっています。福島県会津若松市でフリースクールを開き、不登校の子を支えている江川和弥さん(寺子屋方丈舎)は、現場で「生きづらさの低年齢化」を感じているそうです(参照)。

出席に頼る教育、抜け出せれば

不登校の増加は特定の子どもたちに起きる問題ではなく、コロナ禍や生きづらさの低年齢化など、すべての子どもに対して起きていることが影響しています。それが専門家2名の見立てでした。

一方、不登校の増加に対しては何が求められているのでしょうか。前提として子どもが不登校になるのは自然なことであり、文科省も「不登校の子ども本人には非がない」(『不登校新聞』2017年)という認識を示しています。しかし現在は学校中心の教育制度です。今不登校をしている子は学校で傷つけられたからでしょう。これは苦しいことであり、解決されるべきことです。

現場で支援している江川さんは解決すべき課題の1つに「居場所不足」を挙げ、教育学者・内田良さんは「オンライン授業の整備」を挙げました(参照)。共通点は「選択肢の多様さ」を確保する視点です。オンラインであれ、オフラインであれ、不登校の子どもが受けいれられる場はもっと必要です。将来的には、学校であれ、オンライン授業であれ、フリースクールであれ、いろんな学び方を子どもが行き来できるような仕組みが求められています。そのような多様な選択肢を認めた場合、学校の出席はどうやって取ればいいのか。卒業資格や学習評価は誰がどうするのか。

いろんな混乱が生じそうですが、つまるところ「出席」に依存した教育制度をやめてしまえばいいわけです。ICT技術を使えば、そんなに難しいことではなく、諸外国でも例はあります。「出席」に依存した教育制度をやめれば「不登校」という概念そのものも変わってくるでしょう。不登校で苦しむ人も、ぐっと減ります。そんなことも議論の1つに挙げるべきだと考えています。

※令和2年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」より

(文/不登校新聞 編集長・石井志昂)

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日本で唯一の不登校専門紙です。不登校新聞の特徴は、不登校・ひきこもり本人の声が充実していることです。これまで1000人以上の、不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場しました。

また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

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