葬式鉄もノーマーク、2階建て電車「215系」の引退 着席通勤需要に応え、1992年に4編成が登場

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215系は通勤ライナーの「湘南ライナー」を中心に使用され、「湘南ライナー」の新宿発着版となる「湘南新宿ライナー」(後の「おはようライナー新宿」)にも使用された。「湘南ライナー」では、増発に際して横須賀線経由で東京地下駅に乗り入れる列車も登場したが、この列車に215系が使用されたことも知られている。当時の横須賀線・総武快速線の地下区間では車内信号式のATC(自動列車制御装置)が使用されていたために、215系もATCを搭載していた。

通勤ライナーは通勤時間帯に運転され、乗車にはライナー券などが必要だったが、215系の有効活用を図るべく、日中は快速「アクティー」にも使用された。215系は座席数が多い反面、出入口(扉)の数は各車両に2カ所と少ない。しかも出入口が狭く、乗客の流れが悪いこともあって、日中の快速列車では乗客の乗り降りに手間がかかって列車が遅れる事態となっていた。東京周辺から熱海など、観光で乗るには手頃な車両だったのだが、短距離での利用には不向きだったのだ。

結果として、2001年12月のダイヤ改正で快速「アクティー」には使用されなくなり、代わって使用されたのが「湘南新宿ライン」だ。運転開始当初の「湘南新宿ライン」では新宿で折り返しとなる列車が設定されていたが、215系は新宿発着の列車で使用された。だが、2004年10月に「湘南新宿ライン」の増発が行われて新宿折り返しの列車が消えると、215系が日中の定期列車で使用される機会を失っている。座席数を極端に増やした設計があだとなり、使い勝手の悪い車両になってしまった。

中央線でも使用された215系

215系は、「湘南ライナー」などの列車で東海道線を中心に使用され、並行する貨物線や横須賀線も走っていた。基本的には東海道線系統の車両とも言えるのだが、土休日を中心に中央線の臨時列車でも使用された。

中央線では「ホリデー快速ビューやまなし」という列車で使用され、主に新宿―小淵沢間で運転されたが、東京発着だった時代もあった。土休日の朝に新宿を出て小淵沢に行き、夕方に新宿に戻ってくるという運転パターンで、例年3月から11月まで運転され、冬期には設定がなかった。215系を使用した「ホリデー快速ビューやまなし」は2020年11月まで運転されたが、以後の設定はなく、これで事実上の廃止となりそうだ。

「ホリデー快速ビューやまなし」では、グリーン車や普通車の指定席で料金を徴収する一方で自由席の設定もあり、定期券・回数券・きっぷ(普通乗車券)・Suica(スイカ)でも気兼ねなく乗ることができた。当然ながら、他の中央線快速電車のように「立川から三鷹まで乗る」ということもできたが、並行して走っている特急「あずさ」のように特別に料金を徴収する列車と誤解して乗車をためらう客も見られた。

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