「攻めの経営」ばかり説く社長が会社を潰す必然 守りは「全体を把握」できていないと不可能だ

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「経営はスピードが大事」という話を聞いたことがあると思いますが、このスピードには、2つの意味があります。

1つめは、変化のない一定の条件下という安定した環境の中で、車がスタートから400メートルの間に「最高時速何キロメートル出すことができるのか?」というスピードです。こちらは大企業的なスピードと言えるかもしれません。

会社に必要なのは、スピードではなく、アジリティー

もうひとつは、そのときの状況に応じて「最も適した形に俊敏に変化していく」スピードのことで、「アジリティー」と言います。中小企業ではスピードではなくアジリティーが重要です。

出典:『生き残る会社をつくる 「守り」の経営』より

端的に言うと、スピードは「一定の方向で、速い」ことで、アジリティーは「変化度が大きくて、早い」ことです。

変化する可変性の高さと、クイックな早さというのは、会社経営において強い武器になるということです。アジリティーは中小企業が大企業に勝てる少ない要素の1つでもあります。ですから、この要素は「守り」としても重要ですし、「攻め」としても重要なことです。

大企業にアジリティーを求めるのは、とても難しいです。船を想像してもらえるとわかりやすいですが、大きな船は簡単には方向転換できません。大型タンカーなどであれば15分もかかることはザラです。しかし、数人で乗っているようなモーターボートやヨットであれば、方向転換は一瞬のうちにできてしまいます。

同じ方向で、どれくらい速いかということであれば、大企業には絶対に勝てないです。しかし、行動するのを早く、大胆に大きく変化するという点では、中小企業のほうが有利です。ですから、社会の変化によって新しく生まれた市場を、大企業がもたもたしている間に中小企業が獲得できる可能性は高いのです。

大企業は「速い」です。そのスピードでは勝負できません。中小企業は「早さ」と「大胆さ」で勝負することです。アジリティーを大切な行動原則の1つとして持ってもらえたらと思います。

以上のことは、基本中の基本ではあります。しかし、それが徹底されていない企業がほとんどだということも事実です。ぜひ皆さんもご自分の企業の「守り」について、いま一度見直してみてください。

浜口 隆則 ビジネスバンクグループ、スターブランド 代表取締役・PE&HR 社外取締役

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はまぐち たかのり / Takanori Hamaguchi

横浜国立大学教育学部卒業、ニューヨーク州立大学経営学部卒業。会計事務所、経営コンサルティング会社を経て、1997年にビジネスバンク社を20代で創業。<プレジデントアカデミー>は、累計参加者が3万人を超える「社長の学校」となっている。早稲田大学でも教鞭をとり、ユニークな講義で人気に。著書に『戦わない経営』『社長の仕事』『起業の技術』(かんき出版)などがあり、海外でもベストセラーに。大企業の社長から若い起業家まで多くのファンに支持されている。

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