心中を求める母に「鍵」で刺された中3少女の絶望 彼女がその後「保健室の先生」になった理由

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しかし間もなく、またつらい出来事がありました。大学受験が近づき、那津さんが「塾に通いたい」と話したところ、父親は「そんなお金はない」と断ったそう。ところが、ある日那津さんが家のパソコンを立ち上げたところ、ひどい写真を見つけてしまったのです。

「お父さんの車のなかで、知らない女の人とお父さんが運転席と助手席に座って、ティファニーのネックレスを持っている写真を見つけて。仲良く手をつないでいる写真とか、ほっぺにチューしてる写真とかがいっぱい出てきて。めっちゃ腹立ったし、気持ち悪いなこいつと思って」

取材中はどんなひどい親の話でも非難はしないよう気をつけているのですが、このときばかりは「ばかじゃないの……」と口に出てしまいました。なんでそんなところに、そんな写真を。その前に、お父さん、何をやっているの。

「それまで正直『お母さんだけがおかしい』と思っていたんですけれど、『お母さんをおかしくした元凶はこいつだ』って。お母さんはそれをずっと言っていたのを、私も『また人のせいにして』ぐらいにしか思っていなかった。けど、『本当にそうだったんだ』と気づきました」

他所に“お父さん”をしに行く、無神経すぎる父親

すぐには父親には言えませんでしたが、1週間ほど経って耐えきれなくなり、那津さんは学校から携帯で父親にメールを送ります。パソコンの写真を添えて「あの女って誰?」と尋ねたところ、帰宅後に話がありました。相手は、父親が2年ほど前から付き合っているシングルマザーで、那津さんと弟が成人したら一緒になりたい、というのです。

「気持ち悪いね、って言って、話を終わらせました」

筆者もシングルマザーで、現在のパートナーと付き合い始めた頃、相手には思春期の子どもがいました。ですから交際自体を非難する気はないですし、そんな資格もないのですが、それにしてもこれは無神経すぎるでしょう。

「お父さんはそれがバレてから、土日は家にいなくなったんです。口実としては、家のちょっと近くに結構大きい銭湯があって、『そこに行く』と言う。それで夜中に帰ってきて、次の日の日曜もいない。私はそのとき気づかなかったんですけれど、一度『私も銭湯に行きたい』って言ったら、もう烈火のごとく怒って、『絶対ダメ!』って。

あとからよく考えてみると、たぶん向こうの家に行って“お父さん”をやって、夜中に帰ってきて、また向こうの家に“お父さん”をしに行く、という生活をしていたんじゃないのかな。そう気づいたのが、大学生のときでしたね」

(後編記事につづく)

大塚 玲子 ノンフィクションライター

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おおつか れいこ / Reiko Otsuka

主なテーマは「いろんな形の家族」と「PTA(学校と保護者)」。著書は当連載「おとなたちには、わからない。」を元にまとめた『ルポ 定形外家族』(SB新書)のほか、『PTAでもPTAでなくてもいいんだけど、保護者と学校がこれから何をしたらいいか考えた』(教育開発研究所)『さよなら、理不尽PTA!』(辰巳出版)『オトナ婚です、わたしたち』(太郎次郎社エディタス)『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(同)など。テレビ、ラジオ出演、講演多数。HP

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