夫婦仲も悪化し、母親は追い詰められていたのでしょう。その日はおそらく病状も悪かったのかもしれません。彼女が家を出ようとしたところ、母親は「もう行くな、部活をやめろ」と迫ってきました。でも、彼女にとってはいつものこと。「また言ってるな」と思いつつ、家を出ようとしたところ、背後から母親に、掃除機の柄で頭を殴られたのでした。
「『なに?』と思ったら、『あなたを殺して私も死ぬ』って言い出して。でも手に持ってるのは家の鍵。『わかったわかった、家、出るからね』って言ったら、ここ(腕の内側)に本当に鍵をドーンって刺したんです、あの人。ここからここまで、ズバーンって裂けて。『あ、今日のお母さんは本気だ』と思って。
どうやって逃げたのかも覚えていないんですけれど。とりあえずそこにあるものを手当たり次第に投げて、お母さんもその辺のものを手当たり次第に投げて、一瞬ひるんだのかな? 『こんな暴力的な女は警察に通報してやる』ってお母さんが言って、電話を取りに玄関から消えた瞬間に、靴も履かないまま学校にバーッて逃げて。血をダーダー流しながら職員室をノックして、ワーンって泣きながら、先生に『お母さんが』って」
父親にはすぐ先生が連絡を入れてくれ、警察には父親が連絡を入れました。母親は警察に引き取られ、その後は入院することに。以来、那津さんとは離れて暮らしています。
「最悪の鍵」
しかし高1のとき、再び予想しないことが起きました。このとき母親は、隣の市にある実家(祖母の家)で暮らしていたのですが、ある日突然、那津さんの家に入ってきたのです。3時間ほどかけて歩いてきたらしく、家の鍵をずっと隠し持っていたようです。
那津さんはトイレに逃げ込んで父親に電話をして、事なきを得たのですが、父親は「ガチャガチャと鍵を開けて入ってきた」という那津さんの話を信じてくれませんでした。そのため、母親は翌日も現れて家に侵入。そこでようやく、鍵を回収できたということです。
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