災害大国日本の「学校防災」テコ入れ急務の深刻 東北出身元教員と東日本大震災を学びに変える

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先生が変われば、子どもも親も地域も変わる

これまで参加した先生は、全国66校。事後アンケートでは「大変満足」「意識や行動が変化した」という答えが100%と高く評価されており、受講後はそれぞれが自らの現場で学んだことを生かしている。

若くて体力がありそうと防災係にされ、不安から受講したという小学校の先生は、「この講座で全国に仲間ができ、自分が大きく変わった」と目を輝かせる。勤務先の園が3mの浸水予想地域にある保育士は「釜石東中をまねて、園舎の浸水水位に大きな矢印を付けたら同僚が驚き、防災の話が弾んだ。今は毎日園児が何をできるかを考え、周りに相談し、園児の命を守るために行動している。次は何を仕掛けようか思案している」と話す。

SSVでは、この講座に加え、防災先進都市を標榜する福岡市の高島宗一郎市長、市教育委員会と協働し、市内の津波・高潮危険区域にある小・中学校各1校を「防災教育モデル校」として選出。全教員が同じ講座を聞き、学校単位でアップデートしていく取り組みもスタートし、今後は全市展開を目指しているという。

「学校防災は『先生だけの問題』ではありません。子どもは家族の、そして地域の未来。多くの方に子どもを守る最前線にいる先生たちの苦労を知っていただき、力を貸していただきたい。現に『子どもの学校に紹介できるチラシが欲しい』と保護者から要望があり、女子大生がデザインをしてくれました」

元釜石東中の生徒で、今は地元で語り部をする女性は、「学校で学んだ防災は楽しい時間だったから、よく覚えていた。あの授業が私たちの命を守ってくれた」と話す。学校防災は楽しくたっていい。日本全国どこにどんな災害が来ても、みんなで力を合わせ、笑顔で乗り越えられる学校防災にアップデートすることが大切だと感じさせられる一言だ。

来年は、さらに大きなうねりをつくることを目指すという「学校防災アップデート大作戦!」。災害大国日本で、いざというとき、いかに命を守るのか。一人ひとりの平時の取り組みが肝要になる。

かもん まゆ
一般社団法人スマートサプライビジョン特別講師、「防災ママカフェ」主宰、防災士
東日本大震災の物資支援活動を機に、防災ブック『その時ママがすることは?』を企画制作。被災地のリアルと災害を生き抜く知恵を伝える「防災ママカフェ」を主宰、全国300カ所以上、参加者は2万人を超える人気講座に。震災10年目の今年、「学校防災アップデート大作戦!」をスタート、今までにない「釜石と大川の学びを全国の学校防災に生かす取り組み」として注目される。3児の母
(写真:かもん氏提供)

(注記のない写真:Graphs/PIXTA)

東洋経済education×ICTでは、小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。
長島 ともこ フリーライター&エディター

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ながしま ともこ / Tomoko Nagashima

育児、教育、PTA、暮らしのジャンルを中心に、書籍、雑誌、PR紙、WEB媒体において取材、執筆、企画、編集、講演等の活動を行っている。また、自身のPTA活動や記事執筆を機に、全国のPTA仲間と「PTA・保護者組織を考える会」を立ち上げ、情報発信やイベントの運営、PTAやP連からの相談活動等を行う。

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