日本の大手銀行の再編は収益性向上に寄与するが、引き続き課題も《ムーディーズの業界分析》
花立真紀
サマリーオピニオン
日本の大手銀行の再編については、2006年1月の東京三菱銀行とUFJ銀行の統合の後、ここ数年間大きな動きはなかった。しかしながら、昨年の後半、新生銀行(預金格付けBaa1/P-2、銀行財務格付けD+、現在引き下げの方向で見直し中)と、あおぞら銀行(預金格付けBaa1/P-2、銀行財務格付けD+)、ならびに住友信託銀行(預金格付けAa3/P-1,銀行財務格付けC)と中央三井トラスト・ホールディングスの経営統合の発表が相次いでおり、日本の銀行業界において新たな再編の動きが出てきた。
こうした再編の背景の1つには、世界的な金融危機以降、特にメガバンクに比べて比較的規模の小さい邦銀を取り巻く事業環境が、規制も含めて厳しさを増していることにある。これら銀行のフランチャイズならびに収益機会が、今後も制約を受ける可能性があり、規模の経済を働かせることにより、注力している特定分野において競争力をより高めることが必要である、との経営陣の意識の変化も背景にあるものと思われる。
ムーディーズでは、日本の銀行業界における大手行の再編は、フランチャイズの強化、顧客基盤の拡大、ならびにコスト削減によるコスト競争力の向上などにより、統合後の銀行にとって中長期的にはある程度、収益の向上をもたらす可能性があるとみている。
一方、さらなる統合は、銀行システムのマクロ経済への感応度(例えば金利リスクなど)をさらに高める可能性がある。というのも、統合後の銀行は、おおかた似通ったリスク管理、ならびにバランスシート構造(多額の日本国債のポートフォリオを有する)を持つことになるからである。