気鋭の三菱商事系コンサルはなぜ躓いたか 上場わずか8カ月で2度の業績下方修正

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ただ、真相はそう難しくない。コンサルティング会社は高度な事業運営を行う印象があるが、実際は泥くさい労働集約型のビジネスである。一般に全社コストの大半がコンサルタントの人件費。シグマクシスの場合も、平均年収1041万円に上る従業員の人件費が全コストの7割を占める。同社の全従業員390人のうち、9割はコンサルタントだ。要は、彼らをいかに“高い単価”で“たくさん稼働”させるかによって収益性は決まる。

問題は、このうちの稼働率の低迷だった。前2013年まで続いてきた製造企業向けの大口案件が終了したことで、今年度は4月から9月の半年だけでも8億円程度の減収要因になることが目に見えていた。新規受注によってその穴埋めをしなくてはいけなかったが、当初の想定より手間取っている。

なぜ稼働率が落ちたのか

当初は、クラウド上で提供する企業のグローバル・サプライチェーン管理システムを今年度の牽引役と目していた。しかし、このサービスを提供している米国企業との販売代理店契約交渉に想定以上の時間がかかった。さらに、多くの社内コンサルタントにとって不案内なサービスを、会社を挙げて一気に展開しようとした計画も無謀すぎた。

「この新しいクラウドアプリケーションを売り込むに当たっては、その商品内容を自社で理解するための学習コストや、販売方法を新たに学ばなければならなかった。コンサルタントがシステムを提案営業するためのデモンストレーション用資料を作成する時間も思った以上にかかってしまい、機会ロスを生んだ」(シグマクシスの田端信也CFO<最高財務責任者>)

結果として、コンサルタントの4~6月期稼働率は計画よりも10%強下回ったという。ただ「こうした種々の下準備による赤字フェーズは上半期で終わり、下期から右肩上がりに売り上げが回復してくる」と田端CFOは説明する。

もっとも、同社のコンサルティング業務は、受注から売り上げの計上まで平均3カ月程度と短い。現時点で計画達成に必要な案件が確定しているわけではなく、業績の急回復が保証されているわけでもない。新しいクラウドサービスで再度飛躍するための“生みの苦しみ”なのか、あるいは、短兵急に新サービスを展開してしまった結果、“火傷を負った”のか、見極めるにはもう少し時間が必要だろう。

西澤 佑介 東洋経済 記者

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にしざわ ゆうすけ / Yusuke Nishizawa

1981年生まれ。2006年大阪大学大学院経済学研究科卒、東洋経済新報社入社。自動車、電機、商社、不動産などの業界担当記者、19年10月『会社四季報 業界地図』編集長、22年10月より『週刊東洋経済』副編集長

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