麻生氏も一時浮上!岸田氏「幹事長人事」の舞台裏 自民獲得議席の変化で揺れ動いた"ポスト甘利"

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そもそも、岸田首相が甘利氏辞任の可能性を察知したのは、投開票日の午前中だった。その時点で入手した甘利氏の出馬している神奈川13区の期日前投票の出口調査で、同氏が野党統一候補の立憲民主新人にかなりの差をつけられていることがわかったからだ。

岸田首相は「午前中の出口調査でもかなり負けている。下手をすると比例復活も危うい」(首相周辺)ことに危機感を募らせた。仮に落選となれば、直ちに後任決定を余儀なくされる。首相が信頼して起用した甘利氏だけに、後任を決める調整は難航が予想されたからだ。 

そこで一時浮上したのが、麻生太郎副総裁の兼務案だった。ただ、兼務となった麻生氏がそのまま幹事長を続ける可能性もあることから、「参院選への影響も考えたらありえない選択」との声が多く、すぐに消えた。

その後、夕刻までの出口調査結果でも甘利氏の劣勢は覆らず、深夜に比例復活が決まる可能性が強まった。ただ、その段階では自民単独過半数も危ぶまれる状況で、後任候補の絞り込みに入った岸田首相は「参院選に勝てるアピール力を持った人物」「甘利氏に代わって党を仕切れる即戦力」との2つの判断基準で2、3人の候補を念頭に置いたとされる。

アピール力で河野氏、党改革で福田氏の選択肢も

参院選でのアピール力を考えると、総裁選で健闘した河野太郎広報本部長や高市早苗政調会長の起用も選択肢となる。さらに、党改革や派閥支配排除の観点から福田達夫総務会長の昇格案も浮上した。

しかし、開票が進むにつれて、自民党が単独過半数や安定多数というハードルを超え、安定した国会運営の必要条件となる絶対安定多数確保という「勝利」が視野に入ると、岸田首相も「人事で奇策を弄する必要はない」との判断に傾いた。

31日深夜、甘利氏が岸田首相に直接、「責任を取りたい、進退は総裁に預ける」と伝えたのはその時点だ。岸田首相は「自分でよく考えて決めたい」と対応を留保。側近や麻生氏、安倍晋三元首相とも調整のうえ、決断する意向を固めた。

その段階で岸田首相が優先しようとしたのは、麻生、安倍両氏も納得させられる党内バランス優先の人事だった。ただ、麻生派の大幹部で安倍、麻生氏と合わせて「3A」と呼ばれる実力者の甘利氏だけに、麻生氏は「自民党勝利の功労者はあなただ」などと慰留していた。

ただ、続投論は党内の一部にとどまり、甘利氏の政治とカネの問題が選挙戦に影響したことも踏まえ、「選挙戦の司令塔なのに、小選挙区で敗れたのは幹事長として失格」との声が多かった。岸田政権発足以来、甘利氏が前任の二階俊博氏と同様に、公認調整などで慣例無視の決定をしていたことなどが、背景にあるとみられる。

このため、岸田首相は1日午後の党本部での総裁会見でも明確な意思表示を避け、その後甘利氏と長時間密談したうえで、茂木氏起用を決めた。「甘利氏の意向を尊重することで、麻生、安倍両氏にも配慮してみせる政治的演出」(自民幹部)でもあった。

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