コロナ死者数が7万人を超えたカリフォルニア州で、ワクチン接種を完了した客だけが入場できるプロテニス大会が開催された。
グランドスラムと呼ばれる四大大会に次ぐ大きな規模のマスターズ1000の大会「インディアン・ウェルズ大会」で、入場する客はもちろん、売店で働く店員、試合中にコートで球拾いをするボール・パーソン、大会ボランティア、運営スタッフ、そして報道陣に至るまで、全員がコロナワクチン接種完了証明書を事前に提出しなければ会場内に一歩も入れない――という制限の下、10月半ばに州南部の砂漠地帯で2週間にわたり開催された。
陰性より「ワクチン接種の有無」が重要
会場の様子はどんな感じかのぞいてみよう。
「トッププロの試合を生観戦するチャンスをこの18カ月間、待ち続けていた」と語るのは、ニューヨーク州マンハッタン在住のリズ・ドラッカーさんだ。ドラッカーさんは20年以上の観戦歴がある大のプロテニスファン。
「私が住む(ニューヨークの)マンハッタンは、全米でも最もコロナ被害が大きく、一時期は遺体を安置する冷凍用の白いコンテナが街中に置かれていたほどひどかった。この18カ月間、マスクを片時もはずさず、細心の注意を払って生活してきた。カリフォルニアはマスク規定がかなり緩いみたいだけど、マンハッタンの私のアパート内の共有部分でマスクをはずしているとドアマンに厳しく怒られる。とにかく絶対にコロナにかかりたくない」
そんなドラッカーさんが重視するのは、イベントに集まる客の検査結果が「陰性」かどうかではなく、あくまで「ワクチン接種の有無」だという。「たとえ昨日受けた検査の結果が陰性だったからと言って、その人が今日も陰性かどうかはわからない。でもせめて、観客全員が自分と同じようにワクチン接種済みであれば、少しは安心して観戦できるから」。
そう言う彼女が、チケット価格が数百ドルはする日陰の席に座って声援を送っていたのは、ブルガリア出身の男子選手グリゴール・ディミトロフだった。
今回の大会には出場していないロジャー・フェデラー選手の大ファンだというドラッカーさんは「ロジャーと同じスタイルの片手バックハンドを得意とするディミトロフが目の前で動く姿を生で見て、ボールの音を聞くだけで、フェデラーの動きが脳裏に浮かんで胸がいっぱいになる」とうれしそうだ。「それほど生テニス観戦に飢えていた」。
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