仕事選びに迷ったら意識したいたった1つのこと

俳人・夏井いつきさんが説く「進路と仕事」

地元の学校や地域コミュニティーの俳句イベントなどを1つひとつこなしていき、いろいろなご縁も重なって、じわじわと俳人として働けるようになっていきました。

働き続ける以上は、自分の仕事に関わる人たちに喜んでもらうこと、人さま、社会のお役に立つことができた方が気持ちいいと思っています。

昔の商売人が言う「三方よし」という言葉どおり、売り手と買い手が満足し、社会に貢献できてこそよい商売。私の場合で言えば、どうすれば俳人としての活動を通じて、世間さまのお役に立つことができるかと、つねに考えています。

この考え方が、私の「俳句の種まき」活動にもつながっています。

言葉を育てることは心を育てること

私が中学教諭になった頃は、ちょうど小中学校で校内暴力がはやり出した時期で、生徒たちがとても荒れていました。そんなとき、私はよく「言葉をちゃんと育てられていないな」と感じていました。

自分の考えや思いをちゃんと言語化して相手に伝えることができないと、「自分なんて……」と思い、誰かを傷つけたり自分を傷つけたりしてしまいます。

また、教師がいくら「いじめや差別はやめましょう」と発しても、言葉が心に響かなければ、生徒たちは同じことを繰り返します。だから暴力やいじめがなくならない。

こうした経験を通じて、「言葉を育てることは心を育てることだ」と考えるようになりました。

俳句は言葉を育てるうえで非常に有効な手段です。俳句をやり出すと言葉がわかる。言葉がわかると、人の話に注意深く耳を傾けるようになります。

日本語の特性を知り、使う技術をちょっと身に付けるだけで、コミュニケーションが成立するようになるんですよ。

私が俳句の種をまく活動として、自分の句を作り、俳句の作り方を教え、『句会ライブ』で身近さを伝え、『プレバト!!』で添削をしているのはすべて、こうした言葉の力を伝えることで、世間さまのお役に立てると思っているからなんです。

(写真:Woman type編集部)

私が1人で「俳句は教育にいい」と発信しているだけでは届かなくても、『プレバト!!』を通して、多くの人たちへストレートに届くようになりました。

ジャニーズの方たちが一生懸命言葉と格闘している姿を見て、10代の子たちが「言葉と向き合うってカッコいい」と思うようになる。

“おっちゃん”こと梅沢富美男さんが作る正統派な句を見て、小学生たちの言葉の理解が深まり、「てにをは」の違いや知らない日本語に興味を持ってくれる子が一定数生まれます。

すると子どもだけでなく、その親である大人たちの言葉も育てられる。俳句を続けていくことは、社会にとってプラスになるんですよ。それが巡り巡って、私自身の仕事にもつながっていきます。

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