カローラクロス対キックス､ハイブリッドSUV比較 トヨタSUVランナップ拡充､日産は対抗できるか

カローラクロスの走行イメージ（写真：トヨタ自動車）

以上のように両車を比較してみると、より実用性が高い装備が光るのはカローラクロスだろう。キックスは、車格が比較的小さいこともあるが、やはり後発であるぶん、カローラクロスが持つ使い勝手の良さには敵わない。一方のキックスは、駆動用モーターでのみ走行する「電動車」ならではのキビキビとした走行性能や、前述したワンペダル操作など、ハイブリッドシステムe-POWERが生み出す独特な走りが魅力だ。カローラクロスよりもコンパクトな車体により、前述したとおり、とくに初心者や高齢者には、狭い路地や駐車場などでの安心感も比較的高い点も評価できる。

キックスの税込価格は、275万9900円～286万9900円。カスタム仕様のキックス・オーテックが311万4100円だ。対するカローラクロスは、全体の価格帯（税込）は199万9000円～319万9000円と幅広く、ガソリン車があるぶん、より安いグレードも設定する。ただし、キックスと同じハイブリッドの2WD車では、259万円～299万円と、非常に近い価格帯となる。どちらもコンパクトSUVというジャンルであることを考慮すれば、やはり競合することは間違いない。

カローラクロスの登場、キックスは挽回できるか？

日本自動車販売協会連合会が発表した登録車の新車販売台数によれば、2021年1月から9月までの9カ月間で、キックスは2万9521台を販売。月平均は約3280台で、毎月のランキングでは常に上位20位までに入り善戦している。

ただし、SUVでは、やはりトヨタのヤリスクロスやハリアーが毎月常にトップ10圏内に入っているし、ホンダのヴェゼルも2021年4月23日の発売以来、9月末までの約5カ月間で2万9346台を販売（月平均4891台）し、順調な売り上げをみせている。競合がひしめくSUVのジャンルだが、一際高い実用性を持つカローラクロスがキックスにとって脅威となる可能性も高い。発売1年以上たつキックスに対し、カローラクロスは新型車だけに、必然的に注目度も高くなる。

日産は、2021年10月7日、コンパクト・ハッチバック車「ノート」のクロスオーバー仕様として、同社傘下のオーテックがカスタマイズした「オーテック・クロスオーバー」を発売した。内外装にSUV的な装備を施した特別仕様だ。価格（税込）は253万7700円～279万6200円とキックスよりも安く、キックスにない4WDも設定する。もちろん、日産ディーラーで購入可能だ。

キックスのスタイリング（写真：日産自動車）

このモデルが本来、キックスが持つ「日産コンパクトSUVの代表格」というポジションを揺るがすほどの存在となるかは不明だ。だが、キックスの販売面などに何らかの影響が出ることも考えられる。キックスは、魅力も多いモデルだが、続々と新型車が登場し、熾烈な争いが続くSUV市場で生き残るには、こうした追加仕様または一部改良が、そろそろ必要な時期なのかもしれない。