原油高騰で一段の円安、年内に1ドル115円突破も 円は「逆資源通貨」+円安でも輸出増えぬ体質に
外国為替市場で円の先安警戒感が強まり、2017年以来となる1ドル=115円を突破するとの見方も出てきた。円安が輸出増につながらず、貿易黒字拡大による円高圧力が生じにくくなっている一方、ドル建てで取引される原油など商品価格高騰によりドルの支払いが増加し、一層の円安を招くリスクがあるためだ。
スパイラル的に円安が進むリスク
円は過去2週間でドルに対し3円以上下落し、先週末には114円46銭と約3年ぶり安値を付けた。円安加速の背景の一つに、今年初め1バレル=50ドル程度だった原油相場が、約7年ぶりとなる80ドル台まで上昇していることがある。
「スパイラル的円安が進むリスクもある」。マーケット・リスク・アドバイザリー・フェローの深谷幸司氏は円安で輸出が増えれば、円買いが増えて円安に歯止めがかかるが、日本企業が海外生産移転などを進めた結果、「円安になっても輸出が伸びるわけでもなく、対外直接投資も止まらない」ため、円安抑制機能が効かないと指摘した。
一方ドルは、インフレ圧力の高まりで米国が利上げに向かいつつある中で、相対的に堅調になりやすく、米長期金利が2%を超えるような状況になれば、「ドル・円の115円超えという世界が見えてくる」と考える。
原油価格が1バレル=100ドル前後だった2012-14年に貿易収支は赤字が常態化。今年8月の貿易収支は原粗油を主因に輸入額が前年比で45%の大幅増となった結果、昨年5月以来の大幅赤字となり、20日発表の9月分も赤字が見込まれている。深谷氏は「今はコストアップ、交易条件の悪化という円安のマイナス面を気にしなければならない」という。