中国が考える本当の領土?「国恥地図」実物を入手 「領土的野望」の起源が「この地図」にあった

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私はテーブルに積み上げた本の山から、ようやく目当てのものを捜し出した。

A4サイズの半分ほどで、単行本のサイズに近い(正確には19cm×13cm)。古い教科書だからひどく傷み、ページを開くだけで剥がれ落ちそうだった。私はまず大枚1万5000円をはたいて製本店に補修してもらった。

表紙には、赤い大きな文字で『小学適用 本國新地圖』とある(「圖」は「図」の意味)。1933年に上海の世界輿地学社から発行された小学校用の地理の教科書である。

最初のページを開くと目次があり、続く「第一図」は二つ折りの「中華民国全図」だった。東アジア大陸の真ん中に中国が示されている。日本列島も右端に見える。その裏に、「第二図」として、同じ大きさの「中華国恥図」がある。これこそがお目当ての国恥地図だ。

驚愕するほかない「国境線」

何よりも目を引いたのは、中国を中心とした広大な地域をぐるりと囲んだ黒の破線と、その上に引かれた太い赤線だった。

日本周辺から見ていこう。赤線は日本海の真ん中を通り、種子島・屋久島をかすめたところで東側に急カーブし、沖縄を含む「琉球群島」を範囲内に収めながら南下する。台湾、「東沙(群)島」の岩礁も囲って進み、フィリピンのパラワン島を抜けたところで、再び急にスールー諸島を取り囲むために東へ寄っている。

ここからボルネオ島北部のマレーシア、ブルネイ、マレーシアとシンガポールのあるマレー半島すべて、そしてインド領のアンダマン諸島まで囲いこんでから、ようやく北上するのだ。

北上した先の陸地では、ミャンマーの西側を通り、ネパールとインド国境を進み、タジキスタンとアフガニスタン、ウズベキスタンやカザフスタンまで含んだ赤線は、中露国境を通ってモンゴルへ向かう。そしてモンゴルもすべて領内としたうえ、樺太すべて、最後に朝鮮半島をまるごと収めて、ようやく環を閉じる。

いくら中国そのものが広大といっても、この赤線が取り囲む範囲は、中国の面積のゆうに2倍を超えているだろう。数えてみると中国に近隣18カ国を加え、さらに日本を含む3カ国の一部を範囲内としている。果たしてこの赤線は、何を意味するものなのか。いったい、小学生たちに何を教えようとしていたのだろうか。

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