「MAZDA 3/CX-30」発売2年で明暗わかれた理由 販売台数の変化に見るマツダSUV戦略の是非

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MAZDA3とCX-30の販売成績を並べると面白いことがわかる。発売直後からのスタートダッシュを決めたMAZDA3がピークを迎え、販売を落としていったのは2019年10月のこと。一方、CX-30は同年9月下旬より受注を開始し、10月より正式に発売を開始した。つまり、MAZDA3の失速とCX-30のデビューが同じタイミングであったのだ。

「CX-30」のインテリアは「MAZDA 3」と似たデザインを採用する(写真:マツダ)

言ってしまえば、CX-30が登場しなければ、MAZDA3の販売はもっと伸びたかもしれない。マツダファンのニーズを、MAZDA3とCX-30で食いあってしまった可能性があるのだ。

しかし、逆の見方もできる。「CX-30を追加したことで新規顧客を獲得できた。マツダとしては総数では伸びた」というものだ。実際のところ、MAZDA3とCX-30の2モデルを合計すれば2020年の販売台数は、4万6221台となる。MAZDA3だけで、この数字を達成できたかといえば、はなはだ疑問だ。 

なぜなら、MAZDA3の属するCセグメントハッチバック/セダンの国内市場はすっかり縮小しているからだ。過去に「ティーダ」などを持っていた日産はこのカテゴリーから撤退しているし、ホンダの「シビック」も苦戦気味。

SUVが欠かせない現代の自動車市場

トヨタでさえ、カローラにはハッチバック/セダン/ステーションの他に、旧モデルとなるセダンの「カローラアクシオ」と同ワゴンの「カローラフィールダー」を併売するワイドバリエーションを用意して、ようやく11万8276台(2020年)。さらに、ほんの数年前は年間7万台に落ち込んでいた。

そこにハッチバックとセダンだけのMAZDA3で、年間4万5000台規模を維持するのは難しいだろう。しかも、現在はSUVブームだ。カローラやヤリスにSUVを追加したトヨタの姿勢が正しいのではないだろうか。

上級セグメントにはセダン/ワゴンの「MAZDA 6」、SUVの「CX-5」「CX-8」をラインナップする(写真:マツダ)

2年を振り返れば、MAZDA3が失速したようにも見えるが、CX-30というバリエーションを増やしたことで、マツダ全体としてプラスになった。マツダの戦略は正しかったのだ。実際に、今はマツダで3番目にたくさん売れているのがCX-30である。数字が、その正しさを証明しているのだ。

マツダは、2022年以降SUVラインナップを強化し、日本にも「CX-60」と「CX-80」を導入するとしている。SUVをラインナップし、全体のパイを増やしていくというマツダの戦略は、これからが本番なのかもしれない。

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鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

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すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

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