FRBイエレン議長、「労働市場は回復途中」 ジャクソンホール講演、市場の反応は限定的

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 8月22日、イエレン米FRB議長(写真左)は、慎重に利上げ開始時期を見極めていく必要があるとの見解を示した。ジャクソンホールで21日撮影(2014年 ロイター/David Stubbs)

[ジャクソンホール(米ワイオミング州) 22日 ロイター] - イエレン米連邦準備理事会(FRB)議長は22日、米労働市場は依然として景気後退の影響を払しょく仕切れておらず、FRBは慎重に利上げ開始時期を見極めていく必要があると述べ、FRB内のタカ派メンバーらをけん制、実用主義的な政策判断が必要との考えを示した。

労働市場は見かけよりもひっ迫している可能性があり、FRBが早めに利上げに踏み切ることもあり得ると示唆。その一方で、労働市場には依然、多大なスラック(緩み)が存在すると強調した。

当地で開催されている経済シンポジウムでの講演で語った。

失業率が予想以上に速いペースで低下したことを指摘しつつも、失業率のみを指標として米労働市場の健全性を判断するには不十分と強調。「進行中の労働市場の構造の変化や、深刻な景気後退が労働市場の機能に永続的な変化を及ぼした可能性によって」、完全雇用に近付いているかどうかの見極めは困難になったと語った。

さらに「労働市場にどの程度のスラック(緩み)が残存するかを判断することも、 FRBの二大責務と一致する雇用水準をめぐりかなりの不透明性が存在するため、ニュアンスを読み取ることが一段と必要になっている 」と述べた。

こうした環境下では「適切な政策を策定するための単純なやり方はない」と強調。既定の政策路線にコミットせず、入手される指標や情報に基づき政策を決定する「実用主義的な」政策アプローチを主張した。

イエレン議長は、FRBが労働市場に存在する緩みの度合いを見誤った恐れがあり、早期に利上げする必要がある可能性を認めつつも、景気回復が腰折れするリスクや、求職をあきらめていた人たちが労働市場に戻ってくることでインフレ圧力が緩和される可能性もあると指摘、FRBが直面しているジレンマが浮き彫りとなった。

利上げ時期については、労働市場の状況が一段と急速に改善すれば、現在想定されているよりも早い時期に実施され、景気が期待を裏切る動向となれば後ずれすることになると再表明した。

また、労働市場における循環的、および構造的な影響をFRBは見極めていく必要があるとした。

イエレン議長の発言に対する金融市場の反応は限定的で、米株式相場はほぼ変わらず。ドル、米国債利回りは小幅上昇した。

カンバーランド・アドバイザーズのデイビッド・コトック会長は「イエレン議長の講演は、利上げに踏み切るには労働市場の一段の改善が必要という大方の見方を確認する内容になった」と述べた。

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