Netflixに共感する人が爆発的に増えた納得の訳 社会課題とビジネスをどう両立させたらいいのか

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3つ目は、すでに存在していたCATVとの違いです。CATVはビジネスモデルの特性上、インターネットや通信のインフラとセットで提供されていました。いわゆるトリプルプレイ(放送と通信とネットをセットで提供)と言われたビジネスモデルを採用していました。

最も投資額や維持コストが高いのが通信やネットのインフラであり、消費者から得たお金はコンテンツではなく、インフラに回ることになり、お金の流れとユーザーが体験したい動画視聴サービスにズレを抱えていました。

その点、Netflixは動画サービスに特化しており、純粋に面白いコンテンツを効率的にみられるという付加価値に対して消費者が対価を支払う構造がわかりやすく、またNetflixもより効率的によりよいコンテンツが見つかるように、リコメンデーションエンジンやコンテンツ制作に積極的に投資することができます。

シンプルに見える因果関係が成立

一見シンプルに見えるこの因果関係が成立していることで、消費者は企業に共感し、企業のサービスの価値を感じやすく、その対価に対する満足度も高まるという循環を生み出せているのです。

この構造はハリウッドでは成立していました。消費者が映画を映画館やDVDで視聴することで売り上げを生み出し、その売り上げにより映画の製作が行われています。

しかし実際は、ヒット作品と大失敗作品があって、全体として成立しているにすぎないのです。ヒットを予測させるアルゴリズムを進化させ、その不確実性を取り除き、安定的な経営基盤によりコンテンツ制作を可能にしたのがNetflixのビジネスモデルというわけです。

Netflixを例に紹介しましたが、サービスとステークホルダーを広く捉え、利害関係を適切に調整することによってビジネスとユーザーは共存可能です。

拙著『サステナブル資本主義 5%の「考える消費」が社会を変える』でも詳しく解説していますが、多くの企業が今、SDGsという社会課題とビジネスをどのように整合させるのかに苦慮しています。社会課題を解決するのは簡単ではなく、成功確率が低い割に、多額の投資や長期的なコミットメントが必要になるからです。

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