日経平均の今後を左右する「重大要因」とは何か テーパリング問題より注視すべき動向とは?

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これまでのところ家賃はCPI全体の上昇を抑制する方向にあったが、向こう数カ月でパンデミック発生前の上昇率に回帰し、それ以降は上昇の原動力になる可能性が高い。新型コロナ禍における金融緩和が住宅ローン金利低下を通じて住宅市場を刺激してきた経緯を踏まえると、「家賃主導型インフレ」は金融政策に相応の影響を与える可能性がある。

インフレの持続性という意味において最も重要なのは賃金、労働コストであろう。「賃金主導型」のインフレを考えるうえで、最近のJOLT(労働実態調査)統計は示唆に富んでいる。

まず7月の求人数は前月比プラス7.4%、1093.4万件と過去最高を更新し、企業の採用意欲が旺盛であることを示した。次に採用者数(入職者)は666.7万人へと増加し労働市場の回復を示したが、求人件数と採用者数の乖離は大きく、なお人手不足感が強いことを浮き彫りにする結果であった。このように労働需給が逼迫するなかで注目すべきは自発的離職率の上昇。7月は2.6%へと上昇し、過去最高を更新した。

日経平均の今後の株価上昇に必要な条件とは

魅力的な待遇を求めて自ら職を辞する人は顕著な増加傾向にあり、このことは今後賃金上昇圧力が強まることを示唆している。この指標が平均時給に約1年の先行性を有することに鑑みれば、今後は賃金主導型のインフレ圧力が高まる可能性がある。賃金と物価の関係は相互刺激的、すなわち労働コスト増加が価格転嫁されるメカニズムは一度働くとすぐには終わらないため、インフレが長期化する可能性もある。

ここで改めて日経平均が年初来高値を付けた9月14日までの業種別パフォーマンス(全33業種)に注目すると、輸送用機械は32位でその間の株価上昇率がほぼ0%であった。停滞の理由は、言うまでなく半導体不足に伴う自動車の減産懸念である。

現在、半導体不足を巡っては2022年も続くとの見方があり、追加の減産リスクは相応に残存する。もっとも、そうしたリスクが株価に相当程度織り込まれているとするならば、今後は供給不安の解消に目が向かい株価に上昇余地が生まれる可能性もある。日経平均の高値更新には自動車セクターに対する払拭が必要だろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

藤代 宏一 第一生命経済研究所 主席エコノミスト

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ふじしろ こういち / Koichi Fujishiro

2005年第一生命保険入社。2010年内閣府経済財政分析担当へ出向し、2年間『経済財政白書』の執筆や、月例経済報告の作成を担当。その後、第一生命保険より転籍。2018年参議院予算委員会調査室客員調査員を兼務。2015年4月主任エコノミスト、2023年4月から現職。早稲田大学大学院経営管理研究科修了(MBA、ファイナンス専修)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。担当は金融市場全般。

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