「スバルの里山」が鴨川市を活性化させる可能性 「絵に描いた餅」で終わらない地域活性へ
そうした状態の中で、SUBARU里山スタジオのメイン広場から急斜面を150mほど登り、山の尾根である「馬の背」に出た。杉林の間から鴨川市に広がる平野、さらにその先に太平洋が見える。
清水さんは「向かいの山には、キョンやイノシシが多いが、こちらの山には動物たちの食料になる自然物が少ないので生息していない」という。
馬の背を進むと、途中に小規模キャンプができそうな平坦地があり、山頂付近には「大日様」(だいにちさま)と呼ばれる大きな岩がある。そこから西の方角を眺めると、鴨川市の観光名所である棚田の大山千枚田(おおやませんまいだ)がはっきりと見えた。
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』での登場風景として映画製作者側が参考にしたこともあり、最近は若い世代からの注目も高まっている場所だ。こうした鴨川市の各所を山間部から見わたすことで、SUBARU里山の地理的な環境が体感的に理解できた。
交流人口に対する期待と市民による行動力
次に、鴨川市の社会全体における、SUBARU里山スタジオの立ち位置を考えてみたい。
まずは、鴨川市がSUBARU里山スタジオに対して、「観光振興や市のPRにとどまらず、地域の社会の振興に寄与する事業」という見方をしており、今後の展開に期待を寄せるなど歓迎の姿勢を示している。
当初、スバルが鴨川市にコンタクトした時点では、映画やテレビなどの撮影地を提供するフィルムコミッション案件として商工観光課が窓口となっていたが、事業の実態が見える化される中で、さまざまな分野で行政や地域との連携の可能性があるという見方に変わっていった。
そうした変化をもたらした背景にあるのが、鴨川市が掲げる総合的なまちづくり計画だ。具体的には、令和3年(2021年)3月に公開した、令和3年から令和7年(2025年)までの「第4次5カ年計画」と、「第2期まち・ひと・しごと創生総合戦略」である。
総合計画の構成は「基本構想」「基本計画」「実施計画」という三段構えで、基本構想では、市の将来像を「活力あふれる健やか交流のまち鴨川~みんなが集い 守り育む 安らぎのふるさと~」とした。
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