引退、2階建て新幹線「E4系」が鉄道史に遺した意義 大量輸送時代の到来を見据え、定員は最大1634人

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E4系の客室はグリーン車と普通車で構成されるが、グリーン車は7・8号車の2階に設定され、残る客室が普通車となっている。新幹線の普通車といえば、通路をはさんで2人がけの座席と3人がけの座席が並ぶスタイルが基本だが、E4系では自由席の2階部分は通路を挟んで両側とも3人がけの座席で、言わば「詰め込み」の設計になっている。

この座席にはリクライニングの機能がなく、代わりに前に倒れるという不思議な構造になっている。前に倒すことで座席が回転できるようにしているのだ。ほかの普通車の座席にはリクライニングの機能があり、自由席では2階部分と1階で座席を変え、差別化が図られていた。

このほか、一部の車両の出入口付近には折りたたみの座席も備えている。ジャンプシートとも呼ばれているが、混雑しているときには重宝したものだ。

形式を越えてそろえられた「色」

E4系は2階建て構造ゆえに独特の外観を備えているが、高速で走るために先頭部のノーズ(鼻)の部分を長くし、環境性能に配慮している。運転台とライトの部分が膨らんだデザインにも特徴があり、車体はアルミ製だが、鉄道誌『新幹線EX』2021年夏号によると、先頭の運転台部分にCFRP(炭素繊維強化樹脂)を用いた車両もあるそうだ。

車体の色は、上半分が飛雲ホワイト、下半分が紫苑ブルーという名前が付いている。JR東日本の新幹線では塗装を揃え、ホワイトとブルーの間のラインだけ色を変えて個性を出していた時期があった。E4系では当初、山吹イエローと呼ばれる黄色のラインが使われていた。2014年から黄色のラインに代わって朱鷺ピンクとよばれるピンクのラインに順次塗り替えられ、現在に至っている。

上半分が飛雲ホワイト、下半分が紫苑ブルー、間に朱鷺ピンクのラインという塗り分けは、E4系の先輩格にあたるE1系のリニューアルに際して採用された塗装でもあった。E1系は2012年に引退したので、引退した車両の塗装を引き継いだとも言えるだろうか。

新幹線の車両では、側面にロゴマークを付けて個性を出しているが、E4系では後にデザインを変えている。E4系やE1系にはMax(Multi Amenity Express)という愛称があり、2階建て車両であることを強調している。E4系のロゴマークは当初、Maxをデザインしたものだった。E4系は後に、上越新幹線の専用車両となっていたのだが、この時期からロゴマークを変え、現在の朱鷺をデザインしたものに改められた。さらに、引退間際にはラストランを記念したステッカーも加わっている。

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