「クモを薬漬けにし死ぬまで働かせるハチ」の驚嘆 クモヒメバチに捕まったクモの悲惨すぎる末路
巣をつくるだけではない。種によっては、軽くて長い糸を気流に巻きとらせて空を飛ぶ「バルーニング」を行うクモすらいる。繭をつくるチョウ目の昆虫など、一時的に糸を使う生き物はいるが、クモほどその生涯にわたって糸を使いこなすものはいない。
現在、クモはおよそ4万種が確認されていて、動物としては昆虫とダニ類に次いで3番目に多様な勢力である。糸と網をもったことが、クモを地球上のさまざまな環境に適応させ、しかも強力な捕食者としての地位を確立させたといえるだろう。
天敵「クモヒメバチ」
そんな糸の使い手を出し抜いて利用し、ただ死ぬよりもひどい運命にたたき落とす生物がいる。それが、クモヒメバチの仲間だ。
クモヒメバチはクモに寄生するハチである。寄生といっても、たいてい最後には宿主を殺してしまうので、その性質は捕食に近く、「捕食寄生」と呼ばれる。
クモヒメバチの雌は、宿主となるクモを発見すると産卵管を刺して一時的に麻酔をし、動かなくなったクモの体表に卵を産みつける。数日後に卵からふ化した幼虫は、クモの腹部に開けた穴から体液を吸い上げて成長していくが、すぐには宿主を殺さない。クモは幼虫を背負った状態で普段どおりに網を張り、餌を捕まえて食べている。
クモは自然界における強力なハンターであり、また、網という堅牢な要塞を構えているため、襲ってくる生き物はそう多くない。
クモヒメバチの幼虫は、そんなクモをボディガードとして利用し、また、自らもその恩恵を受ける要塞のメンテナンスをさせるために生かしておくのだ。
このように、宿主に一定程度の自由な生活を許す寄生バチは、「飼い殺し寄生バチ」とも呼ばれる。ただし、宿主を生かしておくのは、あくまでも自分にとって都合がいいからで、用済みになれば容赦なく殺してしまう。
クモヒメバチの場合、幼虫がいよいよ繭をつくって蛹になろうというタイミングで宿主の体液を吸い尽くして殺す。しかも、命を奪う直前に「最期のひと働き」までさせるものもいる。殺す直前のクモを操って、安全に蛹となって羽化をするための〝特製ベッド〞をつくらせるのである。
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