上越新幹線「Max」引退、2階建て車両の栄枯盛衰 在来線グリーン車は定着、一方で消えた車両も

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2階建てグリーン車が登場した直後の1991年、常磐線向けに試作的に1両だけ普通車の2階建て先頭車両が造られた。当時の常磐線の主力、415系電車に連結するために造られた「クハ415-1901」だ。ドアは片側2カ所ながら一般的な通勤電車に近い両開き扉で、車内はロングシートとクロスシートを組み合わせた座席配置とされ、ラッシュ時の利用を考慮した構造だった。

1両だけにとどまった普通車の2階建て先頭車「クハ415-1901」(撮影:南正時)

しかし、当時の主力車両は3ドア車であったのに対し2ドアではいかに両開きの広い扉とはいえ乗降に時間がかかり、ラッシュ時には効果を上げられないまま増車されず1両のみにとどまり、2006年に廃車となった。

普通車の2階建て車はいずれも成功とはいえないまま終わったものの、2階建てグリーン車はその後、各線に登場し、横須賀線・総武本線、東海道線・宇都宮線・高崎線、常磐線などで活躍中のほか、2023年度末に登場予定の中央線グリーン車も2階建て車両となる。

私鉄や寝台列車も

一方、私鉄も近鉄ビスタカー以降、2階建て車両がいくつも登場した。近鉄の2階建て車の伝統は観光列車「しまかぜ」に受け継がれているほか、京阪は1995年に特急車両3000系のうち1両を2階建てに改造。その後、1998年には特急の主力8000系の中間車に2階建て車を連結した。特別料金不要で乗れる点が特筆される。小田急も1991年登場のロマンスカー20000形RSEに2階建て車を連結した。

寝台特急「カシオペア」も2階建て車両だ(撮影:南正時)

寝台列車も2階建て構造を採り入れた車両が相次いで登場した。ブルートレイン24系25形の個室寝台は、個室を上下に配置した2階建て構造といえる客車が投入されたが、今は寝台特急の衰退とともに消滅した。だが、1998年に「サンライズ出雲・瀬戸」として運転開始した285系寝台電車はほぼ2階建て構造の寝台が大半を占め、最後の定期寝台特急として人気を博している。今では乗車の機会が少なくなったが、かつての寝台特急「カシオペア」も2階建て構造で、クルージング列車として今も運行中だ。

JR東日本の在来線グリーン車には定着した一方、一時期ほかの鉄道会社でも増えた2階建て車両はバリアフリー対応を余儀なくされるなどして姿を消したケースもあり、ついに新幹線からも撤退する。車いす対応は今後も2階建て車両の大きな課題として残ることであろう。

このように2階建て車両は列挙にいとまがないが、過去の車両は写真でその雄姿を偲んでほしい。

南 正時 鉄道写真家

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みなみ・まさとき / Masatoki Minami

1946年福井県生まれ。アニメーターの大塚康生氏の影響を受けて、蒸気機関車の撮影に魅了され、鉄道を撮り続ける。71年に独立。新聞や鉄道・旅行雑誌にて撮影・執筆を行う。

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