中国のバイオテクノロジー企業の艾博生物科技(アボジェン・バイオサイエンス)は8月19日、7億ドル(約769億円)を超えるシリーズCの資金調達を完了したと発表した。
同社はメッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる新技術を用いた新型コロナウイルスのワクチン開発を進めている。今回の資金調達額は、同じくmRNAワクチンを開発中の斯微生物科技(ステミルナ・セラピテクス)が2021年6月に調達した2億ドル(約220億円)を大幅に上回る金額だ。
今回の資金調達の用途について、艾博生物科技は新型コロナワクチンの臨床試験の加速、研究中のその他のワクチン開発の推進、(すでに実用化した)腫瘍治療領域の薬剤ラインナップの拡充、(まだ手掛けていない)新分野の治療法の研究開発投資などに充てると説明した。
同社が研究している薬剤のなかで、いま最も実用化に近いのが新型コロナのmRNAワクチン「ARCoV」だ。艾博生物と軍事医学研究院のチームが共同で2020年1月に研究開発に着手し、同年6月に臨床試験の開始が認可された。現在は第3相の臨床試験に入っており、2万8000人の治験ボランティアが参加、2021年10月末には治験の初期段階が完了する予定だ。
mRNAワクチンは、これまでにドイツのバイオテクノロジー企業のビオンテックとアメリカ製薬大手のファイザーが共同開発した「BNT162b2」と、アメリカのバイオテクノロジー企業のモデルナが開発した「mRNA-1273」の2つが実用化されている。また、両ワクチンはすでに世界の60を超える国や地域で緊急使用許可などにより接種されている。
先行ワクチンより高い保存温度が強み
先行ワクチンに対する艾博生物科技の強みは、同社製のmRNAワクチンが摂氏2〜8度の相対的に高い温度で保存できることだ。すでに6カ月間の安定性の検証試験を完了した。同じく6カ月保存する場合、ビオンテック・ファイザー製のワクチンは摂氏マイナス70度、モデルナ製は摂氏マイナス20度での保存が要件となっている。
艾博生物の資金調達が発表されると、株式市場は中国での海外製mRNAワクチンの前途を悲観する反応を示した。ビオンテック・ファイザー製ワクチンの中国における独占販売権を持つ製薬大手の復星医薬集団の株式は、8月20日の取引開始直後から売り込まれ、終値は前日比6.03%安の63.43元(約1073円)に下落した。
なお、復星医薬集団は7月14日に開催した株主総会で、国家薬品監督管理局によるビオンテック・ファイザー製ワクチンに対する技術面の審査は基本的に完了し、中国国内での製造販売の認可取得手続きを急いでいると説明していた(訳注:9月初旬の時点では認可はまだ下りていない)。
(財新記者:王礼鈞)
※原文の配信は8月20日
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